◆interest family◆

□加護なる背反
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「…支部長、大丈夫ですか?」


アジア支部、支部長ーバク・チャン。生まれる前から全て決められていた、哀れな囚われビト。
最も、本人はそんな風には思った事がないだろうが。チャン家に生まれた事を誇りに思い、また両親がそうであったように、この聖戦を神に背かぬ形で終息させるためそしてもう二度と起こさないため。まるでそれを宿命であるかのように、教団に身を捧げる事を信奉とした。


「……当たり前だ」

少しふらついた頭を抑えるように手を当てる。
ある事件により手が回らなくなった本部に代わって、今は一部の仕事をアジア支部が行っている。一部と言っても、黒の教団で最大規模を誇るアジア支部でさえも手に余る量だ。今まで本部はどうやってこんな量のしていたのだろう。


「それにしても働き過ぎですよ。少し休んだ方が…」

「平気だと言っている。いいから、下がれ。」

まだ何かを言っている部下を無理矢理部屋の外へ追い出す。
ーあの男がボクより室長として相応しかっただけか。

チャン家の血筋の者として、それを認めたくはないし、認めるべきでもない。だが、今思えばそうなのだろう。
彼の代わりに中央庁の人間が教団にいるらしいが、あの個性豊かな面々を統治できないで困っているらしい。彼への絶対的な信頼が彼らをそうさせているのだろう。そもそも、元々彼らは統治できるものではないんだが。
…ボクは、部下からそんな風に思われてる気がしない。


頭を軽く横に振り、雑念をごまかした。こんな事を考えている場合ではない。教団がこれ以上間違いを犯さないように、ボクだけでも正気でいなければならない。

彼は、目の前の書類の山に手を伸ばした。

 
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