◇幾何学◇

□今と昔。
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今と昔、世の中は何1つ変わっていない。

オレらが変わっただけなんだ。







…ギリギリまで残っていた部員達を帰し、残った仕事を片付けて帰路につく。
いつもの夜。けれど彼奴と再開して話してから、そんな日常が急に色褪せて見えた。
子供の頃が良かったとかそうじゃない。今でもそれなりに充実した生活を送れているし。ただ、あの人に引かれた道の上をあの人の思う通りに歩いてるんじゃないかって気がしていた。
そりゃあの人のおかげで高校行けたし、留学も出来た。あの高校に勤められてるのもあの人のおかげだ。…あの人がいなかったら今のオレはいなかっただろう。
でもやっぱり思うのだ。あの人が俺の運命を握っているんじゃないかって。

もしそうなら、もう手遅れだからどうしようもないけど。


マンションまでたどり着くと、建物の前に2人の見覚えのある人影があった。



「よお。ユウはまだか?」

「…ユウが此処にいるとどうして思うんです?」


こんな挑発にのっては駄目だ。ユウを護る為にも...自分を守る為にも。


「俺が彼奴に戸籍の話をしたからな。」

「…へぇ、どうりで。」


「何だ、気づいてなかったのか?」


「ああ、貴方とユウにちゃんと面識がある事にすら驚いています。」


感情を押し隠して、ヘラッと言った。


「…毎年、コイツの誕生日に会ってたんだよ。10年もな。」

ー…そういえばよく疑問に思っていた。ユウは小学校高学年あたりから急激に体格がよくなった。元々頭脳派の俺は、ユウにそういう事を一切教えていなかった。だから年を重ねる毎にたくましくなっていくユウに疑問を感じていた。極度の人見知りだから、自発的に誰かに教わるはずはない。
でも、この人がやらせたなら納得がいく。


「…オレら3人みたいに、あんたの手駒にするつもりですか。」

「俺がいつ、お前らを手駒にした?」

「出遭った時から。」


あの出遭いだって、もしかしたらあの人が仕組んだのかもしれない。


「……あいつは別として、出来の悪いお前とティキはとっくに放したつもりだったんだけどな。」

「それは知りませんでした。では、もう関わらないでもらえますか。」
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