黒猫デイズ
□黒猫デイズ4
1ページ/5ページ
「ワオ、元に戻ってる」
洗面所の鏡を見ながら雲雀は自分の頬や頭を触り、こう言った
「顔中が毛だらけじゃない。でも何で耳だけ猫なんだろ?」
僕の頭には黒い猫耳。あっ、尻尾も残ってる
「(それにしても……)」
何で急に人間に戻ったんだろう。猫になった時はケージの中で出来る限りいろんな事をしたが、戻る事はなかった
それなのに何故急に……
「……もしかしてキスしたから、とか?」
おとぎ話の世界ではよくある話だ
毒林檎を食べた白雪姫にキスをしたら生き返ったり
呪いで眠ってしまったお姫様にキスしたら目覚めたり
蛙にキスしたら王子様に戻ったり――
「うん、でもここはおとぎ話じゃないからね」
まぁ細かい事は気にしないでおこう。次期に分かるさ、たぶん
「さて、これからどうしようか」
寝室に戻ってきた雲雀。時計を見れば、まだ夜は長い
ちなみに耳と尻尾は、自分の意思で引っ込める事が出来た
「(獄寺を起こすわけにもいかないしな……)」
シーツに散らばる銀色を掬う。細くてサラサラなそれは、指の間からすり抜けていった
「(彼には何て言おうか……)」
言ってもたぶん信じない。僕自身も何でこんな事になっているのか未だ信じられない。……いや、でもツチノコやネッシーを信じているくらいだから、もしかして信じるかも……
「(でも言えば何でこうなったのか、とかしつこく聞かれるに違いない。説明するのが面倒くさいし………今はまだこの事を内緒にしておこう)」
いずれ話さないといけなくなる日がきっと来るだろう。その前に他に住める所を見つけてここを出ればいい、うん
「じゃあ久しぶりに人間に戻った事だし。草食動物でも咬み殺しに行こう」
いつものところからトンファーを出す。嗚呼これを持つのは何ヶ月ぶりだろう
高鳴る胸に心弾ませ、僕は窓から外に出た
(えっ、ここ5階?そんなの僕には関係ないよ)
.