*頂捧・企画*

□24時間365日
1ページ/2ページ



放課後、ガヤガヤとうるさく騒ぎながら下校していく生徒達をすり抜けながら、オレはある場所に向かった。






―side 隼人―






目的地に近付くにつれてだんだんと人気が少なくなっていく廊下を歩き続けると、やっとドアが見えてくる。

応接室、と書かれたその部屋の前まで来ると、そのままドアをガラッと開けた。



「…ヒバリ、入るぜ」



開いたドアの先にいるであろう人物に告げながら入室するとドアを閉めた。

だが中は、しん、と静まり返っていて。



「なんだ…いねーのか」


呟いた言葉は小さく響いて消えた。





…いつも一緒に帰っている10代目と野球バカが急ぎの用事があるとのことで早々と帰っていったので、普段は来ない恋人の元へと来てみたオレ。
付き合いだした当初、平日は忙しいから別々に過ごそうとヒバリに言われ休日にしかヒバリに会いに行けなくなってしまって…。

だからこんな風に来たのだって今日が初めてで、少しだけ会う程度ならいいかな、なんてオレらしくもなく淡い期待を寄せていたのだが。


(ヒバリ…)



…当の本人はおらず、静寂だけが部屋を支配していた。



…あぁそっか、見回りか…。


キョロキョロと室内を見渡しながら小さく眉を寄せる。



(………まぁ、ヒバリに内緒で来たから会えなくても仕方ねーのかもしんねーけど)

…少しだけ、残念だ




ふぅ、と小さく溜め息。
(あーあ…)


らしくねーことしたからなんだか気が抜けちまってドッと疲れたぜ…。


オレはとりあえず少しだけ休ませてもらおうとソファーの端に座った。


その時、あるものが目に映った。


オレが座る場所の反対側に置いてあるもの


…見慣れた黒の、学ランだった。




「……」


(ヒバリの、かな)


…いやいや、風紀委員は全員学ラン着てるし、あいつのとは限らねーか。


そう思いながら手にとった。




瞬間、ふわりと漂った香り。




「………あ、」



…思わず小さく声を上げてしまった。


だって、この香りは


この香りは…




(ヒバリのだ…)




一週間のうち、この香りを近くで感じるのは2日間だけ。

最後に感じたのは確か…ああ、もう5日前だ。




「………ヒバリ、」



無意識にぎゅぅ、とそれを腕の中に収めた。



5日ぶりの、少し懐かしい香り。



…すげえ安心する香りで、オレの大好きな香りだ。

悔しいけど、何よりも癒されて、安心して、幸せになれる、
オレの大好きなヒバリの香り。




「………」



ゆっくりと瞳を閉じて、すう、と息を吸い込んだ。



…うん。やっぱりすげえ癒される。



……


…………、



……ってオレ変態みてぇじゃん…



恋人に会えねぇからって、そいつの服の匂い嗅いでるとかやべぇだろ、オレ。





(……)



でも、


(……でも、それぐらいヒバリが好きなんだ…)



本当は、休日だけなんて足りねーんだ…。
けどあいつは平気なんだって思ったら悔しくて…

(……)


…すげえ腑に落ちねーけど、オレは相当ヒバリに惚れているらしい。



「……ムカつくぜ」


…オレばっかり、寂しい。

24時間365日、毎日会いてぇのに。



(………、)



再びぎゅぅ、と学ランを握りしめた。


その時。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ