short story

□狼少年と赤ずきん
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「狼が来たぞ!」

山の下手に広がる小さな町に向かって、少年は声を振り絞って山から叫んだ。

山から降りてやってくる狼に、住民が襲われたり、飼っている家畜が食べられないようにするためだ。

「また、アイツが騒いでるぞ」
「まったく、よっぽど暇なんだねぇ、狼少年ってのは」

しかし、少年の声を信じる人は町の何処にもいなかった。

頭の良い狼達は、彼が自分達の存在を町に知らせるのを知ると、再び森の奥へと戻ってしまうからだ。

町の人々は、狼が来ないのは少年の嘘だからと勘違いをし、彼を嘘吐きよばわりするようになった。

それでも、少年は狼がやってくる度に町に向かって叫び続けた。

何度、嘘吐きと呼ばれようと、聞き流されようと、懸命に。
たとえ、町の誰にも真実だと気付かれなくとも。

(皆の大切な家畜が食べられてしまうより、ましだ)

少年は自分をそう納得させると、また、山にある自分の小屋へと戻って行くのだった。






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