short story

□蛍
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「嫌だ!!行かないで、兄ちゃん!!」
「妙子、すまない。
でも、僕も日本男児だ。お国のために命をかけるのは名誉あることなんだよ」

最後の日、列車を待ちながら兄は言った。
万歳と喜ぶ人々に、私は嫌悪した。めでたいことなどがあるものか。

兄が列車に乗り込むまで、私はずっと兄の服の裾を掴み、泣いた。

「どうか、喜んでおくれよ、妙子」

いつもみたいに笑う兄は、大きな手で優しく私の頭を撫でてくれた。

「戦争が終わったなら、蛍になって帰って来るから」

最後の最後に、兄はそう言って列車に乗り込んだ。
私はその言葉に困惑したまま、去っていく列車を見つめていた。




兄は知っていたのだ、もう、自分が自分で帰って来れないことを。




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