short story
□先輩が蝶になった日
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予告どうりに、先輩が死んだ。
ふと見上げた空、葬式には不似合いな澄んだ水色をしていた。
「私、こうみえて晴れ女なのよ」
雨男の僕だけれど、先輩といる時だけは、いつもこんな晴れ晴れとした空を見ていたような気がする。
貴女がいなくなった今だって、空はこんなに明るく僕を照らしている。
なんだか、悲しくなかった。
ただ、遠くに行ってしまっただけのような気がして、貴女がいなくなったことが、死んでしまったことが、嘘に感じられるのだ。
「私が死んだら、どうか、君だけは泣いてね?」
無邪気な笑顔で、なんとも不謹慎なことを言うな、なんてその時は思っていた。
だけど、ごめんね、先輩。
僕は、貴女のお願いを守れそうにないんだ。涙なんて出てこない。
あまりにも、貴女の死が自然で、まるで先に見ていたかのようで、どうしても、泣けないんだ。
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