short story

□薬指の氷点
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どうしてなんだろう。

いつも、そう、考えるのに。今まで一度だって明確な答えが出たことなどないのだ。
そして、これからも、答えが出るはずはないのだと知りながら、問いかける。

どうして?


* * *


胸の奥が痛かった。
まるで、小さい何かが体の中に潜り込んで、私の心臓をちくちくと刺し続けているみたい。

ふらふらする足取りで、私は廊下の壁を伝いながら歩み、渡り廊下を進む。
チャイムが鳴って、授業はとっくに始まっているけれど、そんなことは今の私に関係ない。

会いに行かなくちゃいけないのだ。会わなきゃいけない気がするのだ。

彼に会わなくちゃ、死んじゃうような気持ちになるのだ。

「せん…せい」

第二校舎の一階。ひっそりと静まりかえった空間。化学室と書かれたプレートを掲げる教室のドアを、私は声にならない声を出して開いた。

陽の当たらない部屋の、ひんやりとした埃っぽい空気。
普通なら不快にしかならないそれが、胸の痛みを少しだけ、楽にしてくれるような気がした。






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