short story
□優しい暗闇
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私は、生まれた時から光を知らなかった。
この二つの瞳が、目を開いた瞬間から、景色を映すのをやめてしまったからだ。
盲目で生まれたことに、後悔などはしていない。
始めから私は"見る"ことを知らなかったから、見える人間と自分を比べることが出来なかったから。
「父様、母様、泣かないで。
私はとっても幸せなんだから」
償い続ける二人に、私は口癖のようにそう言っていた。
生まれたことだけでも、私には満足なくらいの幸せだった。
けれど、そんな私を、村の人々は許してくれなかった。
私の村では、欠陥を持って生まれた子供は、神様の怒りを表しているため、生贄として神様に返さなければならないと言われているからだ。
「盲目なんて縁起が悪い」
「さっさと殺しちゃいなさい」
「頼むから、村に不幸が訪れる前に、神の元にお帰りよ」
口々に浴びさせられる罵声に、一番、傷付いたのは私よりも両親だと思う。
私はそれが悲しくて、二人に隠れてたくさん泣いた。
「貴女は私達が守るわ」
「何も怖がらなくていい」
二人は私を抱き締めながら、そう言ってくれた。
嗚呼、私が強くあらなくてはいけないと、心の中で強く誓った。