short story
□輪廻
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僕の上司は、特殊な仕事をしている。
「あーあ、君は生前に随分とやらかしてくれたみたいだね。
これじゃあ、次の転生までは地獄で八百年くらいかな」
壱、
死者の生前の行動から天か地への裁きをする。
「君は天界でも優秀だったみたいだからね、転生を認めよう」
弐、
冥界で与えられた期間を満たしたものを、再び人として転生させる。
他にもまだまだあったような気がするけれど、重要なのはこの二つの仕事だ。
人は肉体と離れた後も、裁きを受けて二つの世界に別れたあと、上か下で生き続けるのだ。
ただ、稀に肉体から離れるときに、全てを置いてきてしまう人間もいる。
その場合、彼の元に送られる報告書も白紙になり、裁きを受けることが出来ないため、上にも下にも行くことが出来ない。
彼が知る限りで、こんなケースに陥った人間は僕一人らしいけれど。
だから、そういう人間は、彼の部下として働くのだ。
「お疲れ様です。今日の分は全て終わりました」
チェック印の付いた名簿を確認しながら僕が言えば、彼は大きく伸びをしてみせた。
見た目は僕らと変わらない人間。
けれど、彼は初めて人間が死んだ日から、ずっと、この仕事をしているのだ。