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□子守唄のように
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(7000hitキリリク)
「私にも名前をつけて?
貴方と一緒に行きたいの」
先程の少女の声が、まだ側にいるかのように耳の奥へと入っていく。
ロウソクの灯りしかない、長い城の廊下を歩きながら、銀月兎は思わず深いため息をついた。
(あの娘がやって来たせいで、女王はお怒りだ)
ご機嫌斜めの女王をなだめるのに、今日はいつも以上に時間がかかったような気がする。
荒れ果てた城を横目に見ながら、本日、何度目かのため息をついた。
その間にも、さっき出会ったばかりの少女、アリスの声が鼓膜の中へと響いていた。
「貴方と一緒にいたいの」と…。
「くだらない…」
そう、小さく口に出して呟いた。
銀月兎にとって、アリスの言葉はまったく理解ができなかった。
なぜ、そんなに自分に感謝するのか、なぜ、自分を求めるのかが。