機械仕掛けの運命 #1【目覚め】
真っ暗で何も見えない、聞こえるのは、規則的に響く時計の秒針の音─

これから始まるのか、それとも、もう終わったのか、私にはそれを考える事ができなかった。
「目覚めなさい」
テノールの優しい低い声が聞こえて、私はゆっくりと目を開いた。
「やっと君に会えたね」
「貴方は誰?」
その質問に、声の主は微笑みながら言った。
「僕は父親だよ、君を創ったのは僕だ」
「私の…お父様?」
「そうだよ」
「もう、一人ではない?」
「あぁ、これからは外の世界で僕と生きるんだ」
「…生きる」
私は小さな掌を握ってみた。確かな感触に自分の存在を実感した。
「さぁ、行こうか」
「何処へ?」
「旅に出るんだよ、学ぶ事はたくさんある。」

そして私はお父様と世界中を旅する事になった。
私は当然のようにお父様が好きだったし、お父様も私を愛してくれた。
「僕の可愛いお姫様、いい夢を見るんだよ」
「おやすみなさい、お父様」

眠る前にそう言って額にキスをしてもらうのが、何よりも嬉しかった。
こんな日々が毎日続けばいいと、そう思いながら私は夢を見た─




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