たんぺん2 after091215
□おやすみ
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ベッドに入り目を閉じた。
ユミコ…。
明日は千秋楽。
ここ本拠地での、ユミコの最後の一日だ。
だけどまだ、東京がある。
その東京が終わったって、ユミコとの縁が切れるわけじゃない。
そうやって、散々自分に言い聞かせてきた。
でも、ここには色んなものが刻まれすぎてる。
必死になって練習に明け暮れた同志だった青春時代。
特別な想いを抱き始めて、お互い翻弄された、ほろ苦い恋のハジマリ。
泣かせたこともあった。
怒らせたことだって、いっぱいあった。
そして、色んなこと乗り越えてきた。
明日、思い出がありすぎるこの場所を、
あの子は飛び立っていく。
やっぱり特別な一日を目の前にして、胸が昂ぶっているのか、
今夜は今までごまかていた気持ちが、
目を閉じると、ぐるぐると渦を巻きはじめる。
ユミコ…。
浮かんくるのは、大好きなあの笑顔。
泣いてる顔でも、怒ってる顔でもない。
ユミコ…。
あぁー…、会いたい。
真っ暗な中、ベッドの脇のサイドテーブルをまさぐった。
探そうとしていた携帯電話は、すぐに見付かり、それを手にした。
ユミコ…。
携帯電話を広げると、そこには姪っ子の画像と日付と時間が映し出された。
3月8日(月)
2:19
あと数時間もすればユミコに会える。
だけど、その時は私だけのユミコじゃない。
みんなのユミコ。
だからといって、こんな時間から会いに行くわけにはいかない。
じゃぁ、電話ぐらい…。
ううん、ダメ、ダメ!!
迷惑に決まってる。
明日だって早いし…。
もう、寝てるかもしれないし。
私は自分勝手な感情との葛藤の末、
携帯電話を閉じた。
その時
私の手の中の電話が淡い光を放ち、鳴り出した。
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