たんぺん2 after091215


□おやすみ
1ページ/2ページ


ベッドに入り目を閉じた。



ユミコ…。



明日は千秋楽。
ここ本拠地での、ユミコの最後の一日だ。

だけどまだ、東京がある。
その東京が終わったって、ユミコとの縁が切れるわけじゃない。

そうやって、散々自分に言い聞かせてきた。


でも、ここには色んなものが刻まれすぎてる。


必死になって練習に明け暮れた同志だった青春時代。

特別な想いを抱き始めて、お互い翻弄された、ほろ苦い恋のハジマリ。


泣かせたこともあった。
怒らせたことだって、いっぱいあった。

そして、色んなこと乗り越えてきた。


明日、思い出がありすぎるこの場所を、
あの子は飛び立っていく。


やっぱり特別な一日を目の前にして、胸が昂ぶっているのか、
今夜は今までごまかていた気持ちが、
目を閉じると、ぐるぐると渦を巻きはじめる。


ユミコ…。


浮かんくるのは、大好きなあの笑顔。


泣いてる顔でも、怒ってる顔でもない。



ユミコ…。

あぁー…、会いたい。



真っ暗な中、ベッドの脇のサイドテーブルをまさぐった。
探そうとしていた携帯電話は、すぐに見付かり、それを手にした。



ユミコ…。



携帯電話を広げると、そこには姪っ子の画像と日付と時間が映し出された。


3月8日(月)
2:19


あと数時間もすればユミコに会える。
だけど、その時は私だけのユミコじゃない。

みんなのユミコ。

だからといって、こんな時間から会いに行くわけにはいかない。


じゃぁ、電話ぐらい…。


ううん、ダメ、ダメ!!
迷惑に決まってる。
明日だって早いし…。
もう、寝てるかもしれないし。


私は自分勝手な感情との葛藤の末、
携帯電話を閉じた。


その時


私の手の中の電話が淡い光を放ち、鳴り出した。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ