たんぺん


□trick or treat!!
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「おじゃましまぁす。」

「いらっしゃーい。」


お稽古が終って、チカさんの部屋に遊びに来た。

明日もお稽古はある。
今日だって、私は少し遅くまで劇団に残っていた。

だから、ここに来たって、たっぷりとした時間があるわけじゃない。

でも、同じマンションに部屋を借りていた時の名残というか、
二人だけの時間がないことが、なんだか変な感じで・・・。
ついつい、ここに来てしまう。

東京のチカさんの部屋で、少し窮屈な思いを抱えたことが、今ではウソみたい。

一緒に生活してた時よりも、
二人の時間が、チカさんが、

愛おしく、少し遠い。


「お茶煎れるから、座ってて。」

「お気遣いなく。」


キッチンに向かうチカさんの背中に声をかけると、ソファーの横に置かれた大きな紙袋が目に入った。


「すごい、お菓子の山。」

「ユミコだって、いっぱいもらったでしょ?」

「チカさんには負けてますけど。」


今日はハロウィン。

私も下級生やファンの方から、たくさんのお菓子をもらった。
だけど、チカさんが貰ってる量は私なんかとは比べ物にならなくて・・・。

スウィーツ好きを公言してるだけあるなぁ。
まぁ、最近の私もチカさんに匹敵するぐらいスウィーツ食べてますけど。


「ハロウィンなんてさぁ、最近のイベントじゃない?だからついつい忘れちゃうけど・・・。」


・・・。


聞き捨てならない。
最近のイベントだから忘れる?

私の忘れられた誕生日はどうなるんやろ?
チカさんにとっては、最近のイベントだから忘れたってこと?

だからって、
ふつう、恋人の誕生日忘れる?


「チカさんにとっては、私の誕生日もハロウィンレベルってことなんや。」

「もう〜、またその話・・・。何回謝れば許してくれるのぉ?」

「そんなもん、一生許すわけないやん。」

「あ〜、ほら、はらぁ、お菓子あげるから許して。」


チカさんはキッチンから湯気がほんわりと上がる紅茶を運びながら、苦笑いしている。


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