mist-word 一周年記念
□レカス的「シンデレラ」
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昔々、ある肥沃な土地にある王国の片隅に、騒がしい一家がありました。
そこに住む1人の少女は働き者の器量よしでしたが、不幸に追いかけられる性質の持ち主らしく、そのことを哀れんだ人々は同情をこめて、彼女を「シンデレラ」と呼ぶようになりました。
シンデレラの実の母親が幼少のみぎりに亡くなり、長らく妻に操を尽くしていた父親がようやく再婚したため、義母と連れ子の義妹が出来たまではよかったのですが……
「カスミさん。洗濯するのはこれだけですかぁ?」
「イエローお義母さま! 色物は分けて――とゆーか、あたしがやりますから手を出さないでください。仕事が増えますっ」
「カスミねーさま。これ……これ……」
「クリス。いいからそこへ置いて。それより、針で怪我をしてしまったんでしょ? 手当てしてあげるからこっちに来なさい」
「カスミねーちゃん。これ、どーすればよかと?」
「ちょ、ちょっと待って、サファイア!」
こんな調子で、誰1人として家事の役には立ちません。
それでも、父親が生きていた時は、家事を父親と二分して行なっていたためシンデレラへの負担は少なかったのですが、仕事と家事の両立は大変だったのでしょう。
つい2ヵ月前、父親が死に、負担はすべてシンデレラの肩にかかっています。
それを心配して、何かと手助けしようとしてくれる義母と義妹たちでしたが、彼女らが手を出せば出すほど仕事が増えるため、シンデレラは気が気じゃありません。
それでも彼女らに悪気はないので強く出れず、シンデレラは家事に内職にとおおわらわです。
(お父様の残された財産も、後ちょっとしかないわ。そうなったら……)
一抹の不安を抱えつつも、能天気な家族を支えるけなげなシンデレラの姿は、人々に多大な同情と涙を誘うものでした。
→続く