『針で突き刺す』

<魔女の針>拷問具/単独
 ごく普通の長い針。時には持ち易いように手で握る木製の柄が付いている場合もある。
 魔女狩りの際、魔女には悪魔との契約の証が体のどこかにあると信じられていたため、それを探すために用いられた。悪魔との契約の証には痛覚がなく、血も流れないとされていたのである。
 とんでもない例としては、手品で使うような先端がひっこむような仕掛のほどこされたものがある。魔女を見つけると教会から報酬が支払われたのだが、その賞金を目当てにしたこのような詐欺まがいの行為も行われていたらしい。
 もっとも、これがバレれば当然処刑されることになるので、それほど多くはなかったようだ。

<看守の槍>拷問具?/単独
 木製の柄の先に、フォークのように湾曲した穂先のつけられた槍。
 鎧に対する効果は低く、実戦での使用は出来ないが武器には違いない。主に暴動を起した囚人の鎮圧などに使われていたもので、湾曲した穂先を服や肉に引っかけるようにして使用する。
 比較的早い時代には、拷問を加える際にこれで儀牲者を押さえつけるといったことも行なわれていたようだ。

<異端者のフォーク>拷問具/単独
 両端がフォーク状になった鉄製の器具。長さは通常のフォークよりはやや短く、掌程度である。その中央部には革のベルトが取り付けられており、そのベルトを首に巻き付けて使う。
 ベルトを首に巻きつけると、下のフォークが胸元、上のフォークは顎の裏に軽く突き刺さるようになっており、常に上のほうを向いたような形で頭部が固定されることになる。この態勢を長時間に渡って続けさせることによって儀牲者の体力を消耗させる。名称の示す通り、異端審問の際に使用された。

<審問椅子(威圧)>威圧
 審問椅子と呼ばれるものには二種類あり、一般的に想像されるような全体にびっしりと刺の生えたものは実際には威圧用の物である。
 このタイプは、座った人間の体重がそれぞれの刺に均等に分散してしまうため、大した苦痛を与えない。しかし、その外見はいかにも恐しげであるために実際の拷問を始める前に儀牲者にこれを見せ、威圧するという使い方が出来た。

<審問椅子>拷問具/単独
 審問椅子と呼ばれるもののうち、実際に拷問に使用されるのはまばらに刺を生やしたこちらのタイプである。
 威圧用の物で想像されるように、この刺の生やされた椅子に座らされると鋭い刺が尻に食い込み、激しい苦痛を与える。刺の材質は通常は鉄だが、木製だったり竹製だったりする場合もある。
 また、このタイプは手を置く部分にも刺が生やされており、ベルトで手首を固定することによって腕に刺を突き刺すことも可能である。刺の生えた棒で胴体を固定することもある。
 いずれにしても、針の長さはそれほどではなく、致命傷となるような傷を負うことはない。また、針が傷を塞ぐために出血量も少なく比較的『安全に』儀牲者を苦しめることが出来た。
 異称である祈りの椅子というのは、上に座らせた犠牲者が苦痛のために身体を折り、前屈みになって行く姿が祈りを捧げているように見えるためである。

<野ウサギ>拷問具/単独
 野ウサギという名称で呼ばれるものには二種類あるが、一つ目は床(もしくは台)の上に縛り付けられた犠牲者の上を棘付きのローラーが転がるようになっているものである。また、このタイプのバリエーションに人間の方を車輪にくくりつけ、鋭い刺を生やした板の上で回転させるというものもある。(参照→拷問の車輪)
 どちらにしても、刺は身体に突き刺すためというよりは、回転の力を利用して皮膚を引き裂き、剥してしまうために用いられる。つまり、鞭や刃物ではなく刺を利用した皮剥ぎであり、ちょうどウサギの皮を剥ぐようにして人間の皮膚を剥ぎ取ってしまうことからこの名称が与えられたものと思われる。

<揺籠>拷問具/単独
 人間が体を伸ばして入れるようにした鉄の檻で、中に無数の棘が突き出している器具。犠牲者を中に入れて揺すると棘が犠牲者の体に付き刺さり、苦しめるようになっている。
 この器具も野ウサギと呼ばれることがあるが、こちらは皮剥ぎではなく純粋に刺で肉体を傷付けることを目的とした器具であり、あまり共通点は見られない。
 なお、同様の原理で内側に向けて無数の釘を打ちつけた樽に人間を押し込め、坂道を転がして殺すというものが民間での私刑として行なわれたこともあるらしい。

<鉄の処女>拷問具/単独? 処刑? 拷問具/威圧?
 おそらくは審問椅子と並んで有名な拷問器具。名前の通り鉄製の棺で、外見は少女になっている。前部は観音開きになっており、内部には棘が生やされている。犠牲者を中に閉じ込め、扉を閉めると棘が犠牲者の体に付き刺さることになる。
 この際、針は急所を外れるように設計されており、また底部の蓋が扉が締まると同時に外れるようになっているために生きたまま犠牲者は針によって宙吊りにされ、そのままの体勢で放置されることになる。中には七日間に渡って生きていたという記録もあるが、これはさすがに眉唾ものだと思われる。
 また、この器具は大変分厚く作られており、内部の犠牲者の声が外に漏れることはない。時には扉を開けては締めといったように犠牲者を傷つけることもあったようだが、普通はそのまま放置しておくのが普通だったようだ。
 とはいえ、この器具が実際に使用されたという記録は少なく、どちらかといえば犠牲者を威圧するための器具に分類されるのかも知れない。

<鋼鉄の乙女>拷問具/独立? 処刑?
 上のものと名前が似ており、外見もよく似ているが実際には全く別の器具である。鉄の処女が内部に針を持っていたのに対し、こちらは像の外側に針が『飛び出す』ような仕掛けが施してある。また、こちらには腕があり、犠牲者をその腕が歯車の力で抱き締め、同時に像の内部に隠されていた針が飛び出して犠牲者を貫くのである。
 この腕の抱き締める力は大変強く、犠牲者の背骨を砕いてしまうほどだったと言う。また、針のほうも急所を貫くため、犠牲者はほぼ確実に即死した。拷問道具と言うよりは処刑器具と言ったほうが正確であるかもしれない。
 ある領主が自らの妻「アガペ」を模した像を作り、この器具と同じ仕掛けを施しておいて自らの意に沿わぬ召使たちに向かい「私にはお前を素直にさせることはできないが、我が妻アガペになら出来るだろう」と言って脅した、という逸話があるが、真偽は不明である。

<バーデン・バーデンの処女>処刑
 鉄の処女/鋼鉄の乙女の二種類は像そのものに殺傷の仕掛けがしてあったが、このバーデン・バーデンの処女は正真証明ただの像である。ただし、その前の床が落し穴になっておりその底には鋭い針がいくつも植えてあるのだ。ある領主が考案したとされているが、実在するかどうかは少し疑わしい部分もある。
 領主の怒りを買った人間は、像に触ってくれば許してやろうと言われる。像に何かあるに違いないと考えつつ慎重に近寄っていくと、突然開いた落し穴に落ち、全身を針に突き刺されて死んでしまうことになる。
 いわば、像は儀牲者の注意を引きつけておくためのオトリなのだ。拷問器具というよりは一種のトラップと言えるかもしれない。

<苦行用ベルト>拷問具/補助
 内側に棘の生えたベルト。身動きをする度に棘が体に突き刺さり、犠牲者を苦しめることになる。また、長時間の着用は傷口を化膿、壊死させ、死に至らしめることもあった。
 拘束ベルトのように両腕をも封じてしまえるタイプもある。

<五寸釘>拷問具/独立
 大工道具の釘である。腕や腿などに直接打ち込むのが普通だが、手のひらや足の甲を貫通させ、そこに蝋燭を立てることもある。そうすると、滴った蝋が釘によって出来た傷を直接焼くために激しい痛みを与えることが出来る。
 また、その先端を爪と肉の間に刺し込み、少しずつ打ち込んでいくことで爪を剥がしてしまうという使い方もされる。針と比べて太さがある為、痛みが大きい。また、金槌で少しずつ打ち込んでいく形になるため衝撃がより苦痛を増大させる効果もある。

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