『火責め』

 拷問に於いて、火責めが単独で用いられることは少ない。たいていの場合、他の拷問を行ないながら更に負荷を加えるための補助的な責めである。
 また、内容的には『熱っした金属を肌に押し当てる』という単純なものなので、それほど複雑な器具は本来必要ないとも言える。

<焼きゴテ>拷問具/補助
 真っ直な鉄の棒か、その先端に鉄の板をつけただけの簡単な道具。真っ赤に熱っし、儀牲者の身体に押し付けることで火傷を負わせる。火責めに用いられる器具の中でも基本形と呼べるものである。
 それだけに単独で用いられることはまずなく、大抵は他の拷問の最終段階に更なる苦痛を与えることを目的として使用された。

<焼きゴテ>刑具/恥辱刑
 アルファベットを形どったもの。基本的には拷問具として利用されるものと同じだが、こちらは罪が確定した罪人へと使用される。刺青と同じく焼き印は一生残るものであるため、罪人はその後の人生を罪を犯したという看板を背負って生きていかなければならない。
 文字によって犯した罪が一目で分るため、場合によっては非常に厳しい刑罰となった。肩の後ろ、つまり普通には見えない場所が選ばれることが多いが、時として頬や額に押される場合もある。また、女性の場合は胸に押されることもあったという。

<蝋燭>拷問具/補助
 焼きゴテと並んでよく使われる道具。太い一本の蝋燭を用いる場合と、やや細い蝋燭を複数束ねて使う場合がある。
 焼きゴテと比べると、直接火傷を負わせるというよりは炎を儀牲者に見せつけることで恐怖を煽るという、脅しとしての用法が目立つ。とはいえ、炎で直接肌を炙れば当然火傷を負うことになるし、効果はかなり高い部類に入る。

<吠える雄牛>刑具/処刑?,拷問具/威圧?
 シチリアの君主ファラリスが芸術家ペリロスに命じて考案させたという伝承から二人の名を冠して呼ばれたり、その拷問結果から吠える雄牛と呼ばれたりもする。
 名称からも分かる通り、外見は巨大な金属製の雄牛である。内部には人が入れるぐらいの空洞があり、犠牲者は胴体に設けられた扉から内部へと閉じ込められる。その後、雄牛全体を炎で炙って内部にいる犠牲者を焼き殺すわけだが、その際に犠牲者があげる悲鳴が内部で反響し、まるで牛が吠えているように聞こえるという。
 最初の犠牲者は考案者であるペリロスであり、ファラリス王も民衆によってこの処刑具によって殺されたという由来が伝えられているが、真偽のほどははっきりしない。
 また、この器具が実際に使用されたという証拠となるような記録が乏しく、儀牲者を威圧する目的で使用されたのではないかとも思われる。

<クエマドロ>刑具/処刑?
 窯という意味で、その名の通り煉瓦製の巨大な窯の中でゆっくりと犠牲者を燻す。異端者に対して行われていたらしいが、異端者に対して行われた処刑法としては火刑の方が一般的であったため、改宗を認めれば解放されたのではないかという推測もされている。

<火責め椅子>拷問具/単独
 鉄製の椅子で内部が空洞になっており、そこに炭火の入った箱が置けるようになっているもの。犠牲者を縛り付け、足などにラードやタールを塗ってから炙る。基本的な原理としては焼きごてや蝋燭と変わらないが、それを椅子という形で一つの器具にしたのが西洋の特徴であり、日本ではこのような器具は見られない。審問椅子にこの機能が付けられていることも多く、比較的一般的なものであったようだ。

<火頂>拷問具/単独
 真っ赤に焼けた鍋を頭に被せるという拷問方法で、鍋のほかに王冠や兜が用いられることもあった。単独で火責めが行われる珍しい例である。
 ただ、この器具の場合、頭蓋骨が砕けてしまうことが多かったともいい、もしかしたら処刑目的、あるいは、見せることで威圧するのが目的だったのかもしれない。

<スコットランドの深靴>拷問具/単独
 深靴の形をした鉄製の足枷。犠牲者の足をその中に入れ、火で炙って使う。スペインでは靴の中に熱湯や熱い油が注がれることもあった。

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