クロック

□キモチとコトバ 【高主】
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「俺のコト好きです…?」

本気で聞いても先輩の答えはいつも

「好きじゃない」

その一言
しかも顔色一つ変えずに言われるとかなりショックで…
学校からの帰り道
自転車を押しながら先輩の後ろをとぼとぼ歩いて付いていく
だけどその足はすごく重い
こんなに好きなのに…こんなに大好きなのに…
少しくらいこの気持ち分かってほしいって思うのは俺の単なるワガママ
愛情の押し売りなんてしたくない
だから言わない
…だけどホントはウソでもいいから好きって言って欲しいんです
先輩の口から好きって言ってほしいのに
天地がひっくり返っても先輩の口からその言葉が出ることはないだろう
恥ずかしがりやなこの人は
俺の気持ちなんてきっと考えてないこの人は
ずっと俺がほしい言葉を口にすることはない
言葉なんて儚いものですよ
でもその言葉を聞けばどれほど幸せな気持ちになるんだろう…そう思うと諦め切れなくて
俺は懲りずにまた口を開く

「先輩って俺のことキライ?」
「別に…」

前を向いたままずんずん歩いていた先輩が立ち止まる
小さな背中越しに訝しげな先輩の顔がちらっと見えて俺は少しだけ笑った

「好きじゃない、けどキライでもないんです?」
「…別にいいだろ、そんなこと」

そんなこと?
興味なさそうにまた前を向いて歩き出した先輩の後を付いていくことが出来ない
足は止まったまま先輩の後姿を目で追うことしか出来ない俺は自嘲気味に笑った
いっそ諦められれば…
忘れてしまえたなら良かったのに
先輩にとってはそんなことでも俺にしてみれば大きなことなんです
だからこんなに必死になって
こんなに苦しいのを我慢して…
なんだか自分が惨めになって鼻の奥がツンとなった
溢れてきそうな涙を抑えようと空を見上げると
そこには渡り鳥が列をなして飛んでいた
あの鳥には俺の顔ってどんな風に見えるんだろう…
見上げた俺の顔を見下ろす鳥には今どんな景色が見えてるんだろう…
俺とはまったく違う景色が広がってるのかな?
そんなことを思っていたら下から

「高階?」

服を引っ張られながらそう呼ばれた
それはモチロン先輩の声で
俺は慌てて下を向く
ずっと前を歩いていたはずなのに見下ろしたそこには先輩がいて
分かりにくいけどすこし心配そうな顔をしてた
ねえ、先輩と俺の見てる景色も違うんですか?
たかが2、30cm高さが違うだけで見えてるものが違うなんて思いたくないけど…
でも二人別の人間だからまったく同じものが見えてるなんて限らない
先輩に気持ちが伝わらないのもそのせいなのかな?
じゃあ…違うようにそれこそ逆に答えてもらったら…どう言ってくれるんだろう
もしかしたら…好きって言ってくれるかな?
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