読物

□想い
1ページ/1ページ


 月夜の晩に俺はお前を連れ出した。
お前は太陽のような笑顔で俺に笑いかけながら「どこに行くの?」と尋ねた。
俺はそれに答えずにお前の手を引いて歩いた。
お前が困った顔で俺を後ろから見つめているのは解っていたけど俺は何も言わなかった。
だって俺とお前は何も言わなくてもどこか通じ合うものがあるだろ?
だから今は何も聞かずに俺に付いてくればいい。
お前に見せてあげるから俺の特別な場所を。

「ね〜っサスケどこに向かってるんだってば?いい加減教えろてばよ?」

「煩いドベ!黙って付いてこい!」

サスケにドベ呼ばわりされたナルトは頬を膨らませムスとした。
それでも自分の手を引くサスケの手が優しいものだと知っているからその手を振りほどく事無くおとなしく付いて行く。
サスケは相変わらず何も言わず前だけを見つめてナルトの手を引く。
いつもは何かと言い合っている二人だが、二人きりの時はいつもこんな感じなのだ。
多くを語らなくても通じ合える仲とでも言うのか?
二人にはそんな特別な何かがあった。
それでもお喋りなナルトは黙って付いて行く事などできない。
何も言わないでも通じ合える仲でも色々といつもは寡黙なサスケと話がしたいのだ。

「ね〜サスケてば〜そろそろどこに向かってる教えろてばよ〜」

ナルトがどんなに話しかけても無視を決め込むサスケ。
そんなサスケが自分とは違うように感じてナルトは淋しさを感じる。
孤独を分かち合った仲とは言っても俺は産まれたその瞬間から孤独でサスケは・・・
やはり違うのだろうか?
自分ではサスケの孤独を解ってやることはできないのであろうか?
ナルトの胸の中に不安が広がる。
だからさっきからサスケに話しかけているのだがサスケは何も答えてはくれないどころか自分を無視している。
でも繋いだ手はとても暖かくて・・・
自分はどうすればいいのだろうか?
このままサスケの言うととおりに黙っている方がいいのだろうか?
ね〜サスケ俺はお前を助ける事は出来ているてば?
ナルトが無い頭で必死に考えているとフッとサスケの歩みが止まった。
ナルトは目的の場所に着いたのかと思い周りを見渡してみるが相変わらず木々が生い茂る森の中だ。
こんなところに自分を連れてきたかったのかと疑問に思ってサスケに何かを聞こうと思って見つめれば何か真剣な顔でこちらを見つめている。
そんなサスケの顔を見るのは初めてでどう話しかければいいのか解らなくなる。

「ナルト・・・お前は何も心配したり不安になる必要はない、ただ俺に付いてくればいい・・・俺はお前が必要だ・・・お前も俺が必要だろ?だから何も考えず何も言わず俺に付いてこい」

そうサスケは言うとニコリと微笑むから俺はそうだなと納得してサスケの手を強く握り返して黙ってサスケの後ろを付いて歩いた。
サスケは相変わらず何も話さないで前だけを見てただ目的地に向かって歩いている。
でも不思議な事にさっきみたいに淋しくはない。
その反対に幸せな気持ちだ。
サスケはいつも口数は少ないけど的確に俺を安心させる事を言ってくれる。
だから安心してサスケに付いていける。
サスケの後ろ姿を見つめナルトは微笑む。
サスケの後ろ姿が好き。
サスケの真直ぐな目が好き。
サスケの全てが好き。
だから俺は今は何も言わずにサスケに付いていく。
ただそれだけで俺達は幸せだから。

「着いたぞ」

サスケが歩みを止め後ろを歩くナルトの手を引張り自分の隣に立たせる。
ナルトはサスケの後ろ姿にばかりに気を取られていたので状態を把握できずによろけながらサスケの隣に立った。
サスケがそんなナルトを軽く笑いながら指をさした先にナルトは目を瞠った。
そこには宝石箱のような夜景が広がっていたのだ。

「奇麗だってば〜」

目を輝かせ夜景を見つめるナルトにサスケはフッと満足げに笑うとナルトを抱きしめた。

「ここは俺の特別な場所だこの場所を教えたのはナルトお前だけだ・・・」

サスケの言葉にナルトは不思議そうにサスケを見つめる。
サスケはナルトを抱きしめる力を強めまた話し出す。

「俺の特別は全てお前に教えてやるからお前はこの先何があっても俺の傍にいろ・・・俺の特別であり続けろ」

命令口調のその言葉が不器用なサスケなりの告白の言葉と解っているナルトは自分を抱きしめているサスケの頬を両手で優しく挟みコクンと一つ頷いた。
何も言わずとも解っている。
二人の思いはいつも一緒だから・・・


END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ