読物

□迷子犬
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里を抜け大蛇丸の所に行って早一年・・・
実の兄を殺す・・・
ただその復讐心の為に里を・・・
ナルトを捨てた・・・
愚かなる俺はもう二度とナルトに会わす顔など無い。
それでも会いたいと願わずにはいられない。
このかつての故郷から遠く離れた場所で偶然ナルトに会う事など無い事くらい解っているのに・・・
それでもどこかにナルトがいるようであの奇麗な金の髪を探してしまう。
あの奇麗な空色の瞳を探してしまう。
大蛇丸は引きこもりの陰気な奴で食材などの買い出しはもっぱらカブトが行っているが、たまに一人になりたい時・・・
否、ナルトの影を探したい時に自分からかって出て食材などの買い出しにこの里に出てくる。
里は木の葉ほど大きくはないがそれなりの賑わいがあり落ち込んだ俺の心を癒してくれる。
これでナルトのあの負けん気の強い笑顔があれば俺の心満たされるのに。
自分から全てを捨てておきながら愚かな考えをしてしまう事にサスケは口の端を少しつり上げフッと笑い今日の買い出しの品を買う為に商店街が立ち並ぶ里の一角に向かって歩き出したその時懐かしい声がサスケを呼びとめた。
その声の主がここにいるはずも無く、ましてや気楽に自分に話しかける訳もなのに。
幻聴まで聞こえるまでになってしまったのかとサスケは額に手を当て苦悩した。

「サスケ!シカトすんなってばよ!」

しかし幻聴は消えるどころかハッキリと自分に話しかける。
サスケはこんなにもナルト不足で病んでしまっているのかと・・・しまいに幻聴では無く幻覚まで見えてしまうのではないだろうか?
お恐る恐るナルトの声が聞こえた方を見る。
どうやら俺は本格的に病んでしまったらしい・・・
幻覚が・・・
ナルトが俺に向かって笑っている。

「よっ!久し振りだってばよ!」

しかもかなり病んでしまったらしい・・・
ナルトが微妙に成長している。
一年前よりか幾分身長は伸びて髪も少し長くなっている。

「何ボケた顔してるてば?熱でもあるってば?」

ナルトの幻覚が俺を心配そうに見つめながら額に手を当ててくる。
その手は暖かくこれが幻覚なのかと思わせるほどに何も変わらぬナルトの匂いがする。
懐かしいアイツの匂い・・・

「熱無いてばね〜ておい!何目瞑って夢見ごちな顔してるってば!」

サスケの額に痛みが走る。
幻覚のナルトがサスケの額を手加減なしに叩いたようでサスケは痛む額を押さえながら幻覚のナルトを見つめる。

「何しやがる!」

「サスケがボケた顔してるからだってば!俺は悪くないてばよ!」

幻覚がこんなにもハッキリと会話するものだろうか?最近の幻覚は最新式か?否、俺自身が見せてるのだから会話できるのか・・・
それならどうしてもう少し色っぽいナルトを見せてくれないのだろうか?
これでは前のナルトと俺の関係と何も変わらない・・・
幻覚くらい可愛いナルトと甘いひと時を過ごしたいものなんだが・・・

「何一人でブツクサ言ってるてば?お前大蛇丸の所に行って変態に磨きがかかったてば?」

「誰が変態だドベ!」

「サスケ以外にここに変態がどこにいるってば?それに俺はドベじゃ無いてば!」

う〜っむかつく・・・
何で幻覚のくせにこんなに生意気なんだろうか?本物のナルトも生意気な奴だから幻覚も生意気なのか?幻覚なら少しは素直にだな・・・
幻覚なのか?
サスケはマジマジと幻覚と思いこんでいるナルトを見つめる。
ナルトは何だ?と不思議そうに自分をマジマジと見つめるサスケを見る。
幻覚にしてはハッキリと見える・・・
幻覚と話してるという事は一人語とを道の真ん中で言ってる事になるがどうもそうでないような?
周りの人々は気にする事も無く自分達の横を通り過ぎている。
本物!?

「はっ!?ナルト?」

「何?サスケやっぱ頭可笑しくなったてば?やっぱ大蛇丸の所になんか行かすんじゃ無かったてば、変態のサスケが益々変態さんになっちゃたてば〜」

自分をマジマジと見つめてから惚けた声で自分を呼ぶサスケにナルトは変態が益々変態になったと嘆く。
そんなナルトを見つめサスケは悩んでいた。
何故ナルトがここに?
何故ナルトはこんなにも普通に俺に話しかける?
ナルトを裏切って・・・
ナルトを捨てて大蛇丸の所に行った俺に・・・
何故?
後・・・俺は変態なのか?

「何故・・・お前がここに?」

サスケが正真正銘の変態さんになってしまったと嘆き悲しんでいたナルトがサスケに話しかけられてサスケの方を見る。

「今俺てばエロ仙人と修行の旅してるってば、だから今日ここに来たてば、そしたら呑気な顔して歩いてるサスケを見つけて何してるのかと思って話しかけたてばよ」

ナルトの言葉にサスケは頷きながらも何故ナルトはこんなにも普通なのかと益々疑問を膨らませる。

「そんな・・・普通お前を裏切った俺にこんなに普通に話しかけないと思うが?」

サスケの言葉にナルトは一瞬惚けた顔をしてから、サスケの言わんとする事を理解して「あ〜そっか〜」と惚けた答えを返してきた。
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