読物

□不器用な二人
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大型ショッピングモールの出口に立った少年はポケットの中にある小箱を指先で確認すると少し頬をピンクに染めてその場から歩き出そうとする、その時後ろからいつも聞きなれている声が聞こえた。
自分を呼んでいる訳ではない、誰かと楽しそうに話している声だ。
少年は恐る恐る後ろにいるであろう声の主の方を向いてみるとやはりそこには自分が思い描いた人物が楽しそうに大きな袋を抱え自分達の担当上忍と話していた。

「これで準備はバッチリだってば?」

「そうね〜後はお前の腕次第じゃ無い?ま〜先生にかかればこんなの簡単に作れちゃうけどね〜」

「え〜っそれじゃ意味無いてばよ〜俺が作るから意味をなすってばよ!」

声の主である少年は金の柔らかそうな髪を靡かせ空色の瞳を輝かせ少し頬を膨らませ本を読みながら前を歩く大人に話しかけている。
大人の読んでいる本はいつもの18禁小説では無くチョコレートの作り方が記載されているレシピ本。
金色の髪の少年は大人の前に立ち大きな袋を大人に無理やり渡し大人が読んでいた本を奪い取り読みだす。
大人は呆れた顔をしながらも荷物を受け取ると「困った子ですね〜」なんて言いながら前だけを向いて歩きだす。
金の髪の少年がレシピ本を難しそうな顔をしながら読んでいると大人が先に歩きだした事とに気づき慌てて大人の後を追う。

「カカシ先生待っててば〜」

「明日までに作らないと意味無いでしょ〜早く帰って作るよ〜」

カカシ先生と呼ばれた大人は面倒ですと顔に出しまくりながらも子供が追いつくのを待って少年のかなり近くに立ち止まる。
少年はカカシに気付かれないように人混みの中に素早く隠れるが腐っても上忍少年がもとからその場所にいる事が解っていたのだろう少年の動きに合わせて眼だけを動かし、人混みに隠れた少年にニヤッと妖しく笑いかけてきた。
少年はチッと軽く舌打ちをするとカカシを睨みつける。
カカシと少年の一連の動きに全く気付いていない金の髪の少年は嬉しそうにカカシに笑いかけてカカシの服の裾を掴み歩きはじめる。
金の髪の少年はその場に少年がいる事じたいに気づいていないらしく少年の方を一度も見る事無く少年のすぐ近くを通り過ぎて行く。
少年は金の髪の少年の後ろ姿を見つめながらポケットの中にある小さな箱を力一杯握りつぶそうとするが出来ずに漆黒の瞳を細めチッと舌打ちをしてその場から立ち去った。



次の日任務の待ち合わせ場所に来るといつも遅刻ばかりのカカシが待ち合わせ時間前だというのに金の髪の少年と並んで立っていた。
少年は眉間に皺を作りながらカカシを睨み上げた。
カカシはそんな少年に妖しく笑いかける。

「あら〜サスケ〜朝から不機嫌顔だね〜どうしたの?今日はヴァレンタインなのに〜さては目当ての子からまだチョコ貰えてないね〜」

怪しい笑みを崩さずに少年に話しかけるカカシはまさに性悪であろう。
サスケはカカシの言う事など無視し顔をそらし二人が立っている場所から離れて立つ。
すると金の髪の少年がどこか心配そうにサスケを見つめてくる、サスケは金の髪の少年の顔をチラッと確認すると昨日ショッピングモールで買った小箱がポケットの中にあるか確認する。
その小箱を渡せるかどうかなど自分自身にも解らなかった。
それでも買わずにいれなかったのは確かで・・・
女の子が好きな男に告白する日に便乗し自分も好きな相手に告白しようと覚悟は確かにしたけれども・・・
やはりいざ告白となればきっと出来るはずも無い事も確かで・・・
自分が何がしたくてこれを買ったのかなど謎だらけである。
それでもこれを目の前にして買ってしまった。
何も出来ずに諦めるよりは何か行動を起こして諦めたいと思ったから・・・
好きな相手に恋人がいるのは確かで・・・
毎日イチャイチャしている二人を見せつけられているのだから自分が入るスキなど無い事も解っている・・・
それでも自分はアイツが好きで・・・
振られるのを覚悟で告白しようと思っている。
しかしいざその時になったら告白など出来ないのも解っているのだから矛盾しまくっている。
サスケは自分の矛盾だらけの行動にフッと笑うとカカシとなにやら話している金の髪の少年を見つめる。
金の髪の少年は頬を少しピンク色に染めカカシにコソコソと何かを話しかけている、その目線がたまに自分をチラッと確認している事にサスケは少し引っかかりを感じながらも今日も一日この二人のイチャイチャを見せつけられるのかと頭を抱えた。
金の髪の少年はそんなサスケの苦悩など気づくはずも無くカカシに微笑みかけている。
そんな少年の行動にイライラを感じるようになったのはいつからだっただろうか?
サスケがそんな事に悩み始めたその時ピンク色の髪を風に靡かせ自分達の班の唯一の女の子サクラが集合場所に到着してカカシの存在に驚いていた。
いつも余裕で二時間以上も遅刻するはずのカカシが集合時間前にいるのだからその反応は正しい。
それからサクラはカカシに「毎日こうであってほしいものよ!」などと文句を言いながらも今日の任務が始まった。
今日の任務は傷に良く効くといわれる薬草をそれぞれ与えられた籠の中一杯にするという簡単なものだったのでカカシが遅刻しなかった事もあり午前中に任務は終わってしまった。

「は〜い皆頑張ったね〜それじゃ〜今日はここで解散ね〜」

薬草の入った籠をカカシに渡すとカカシは三人の籠の中を確認してそう告げ金の髪の少年の頭をガシガシと撫でた。
サスケはそんなカカシを睨みつけながらポケットの中にある小箱を確認して金の髪の少年に話しかけようとしたその時サクラが自分に話しかけてきた。
サクラの顔は少しピンク色に染まり恥ずかしそうだ。
何故自分が呼び止められたかはなんとなく解っている、サクラの気持ちはずっと前から知っているから。
今日この日におそらく自分がそうしようと思ったようにサクラも自分に告白をすると決めたのだろう。
いつもは一番早く集合場所に来ているサクラが今日は一番遅かった。
それはきっと今日の為に色々と準備をしていたからだろう。
サスケはサクラの前に立ち今からサクラが告げる事の答えを用意し構えた。

「あのね・・・サスケ君も気づいてると思うんだけど・・・私サスケ君が好きなの・・・それで、もし好きの子がいなかったら私と付き合って欲しいなんて思ってるの・・・ダメかな?」

サクラはオズオズとそう告げると色とりどりのリボンで奇麗にラッピングされたチョコをサスケの前に差し出した。
サスケはそのチョコを見つめながらすまなそうな表情になる。
自分の目の前に差し出されたチョコは半透明の袋に包まれ色とりどりのリボンで奇麗に飾り付けられている。
その中身は薄らとしか見えはしないが市販のもので無く手作りな事は解る。
自分の為にサクラが想いを籠めて作ったチョコ。
相手が好きな相手なら喜んでそれを受け取っただろう。
しかしサスケの想い人サクラでは無い。
サスケはもとから用意していた答えをサクラが極力傷つかないように告げる。

「すまない・・・それは受け取る事が出来ない・・・俺・・・好きな奴がいるから・・・ごめんな・・・」

サスケの答えにヤッパリとサクラが呟き切なそうに微笑んだ。

「ヤッパリそうだと思った・・・サスケ君の好きな相手てナルトでしょ」

サクラに自分の気持ちに気づかれサスケは内心焦った。
ナルトが好きだという事はもちろん誰にも言った事がない、しかしサクラは自信満々に言いきっている。
皆に隠し通せていると確信していたのに何故サクラはこうも簡単に俺の好きな相手が解ったのだろうか?

「何故・・・・」

自分の言葉で明らかに動揺しているサスケにサクラはクスクスと笑う。

「同じ班で毎日一緒に行動してたらそんなの解るはよ、しかも私はサスケ君が好きなんだから自然とサスケ君を目で追ってたからサスケ君の視線の先にいる相手は嫌でも解っちゃうはよ」

サクラの言葉にサスケは驚きながらもそのとりだなと変に納得してしまう。

「すまないサクラ・・・」

「も〜謝らないでよ〜いいの〜こうなるのは解ってたから〜サスケ君は自分の気持ちちゃんと伝えないの?」
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