読物

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 相変わらず。
占領軍の兵士が、我物顔にのさばる煤けた街を歩く。
崩れた瓦礫が積み重なる傍らに、汚れた大人や子供を目にした。
何時もの依頼主から、依頼の物品を受け取り、ねぐらのアパルトマンに帰る道すがらだ。
夕暮れが近く。
空の色みが増してきた。
バラックを組み立てた様な市場を傍目に見て、サスケは人気の少ない道を選ぶ。
余り、人と係わり合いになりたく無かった。
隣人が少しでも富めば、少しでも甘い汁を吸おうと纏わり付く人間ばかり。
そんな時代なのだ。
厄介事に係わり合いになりたく無ければ、人に近づかぬのが一番だ。
そう考えて生きて来たサスケにとって、あの夜の出来事は例外中の例外だったのだ。
多分。
似ていたからだと思う。
幼い頃の記憶の中の、彼女に。
鮮明では無い記憶。
ただ、珍しい純粋な金髪。幼い彼女は、何時もサスケの前で笑っていた。
あの頃。
今のサスケとなんら変わらない。
無味乾燥な日々の中で、大人達の都合で引き合わされた彼女だけが、サスケに人間じみた感情を与えたのだった。
だからだろうとサスケは思う。
彼、ナルトの事が忘れられないのも。
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