読物

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「よっ。」
物思いに浸りつつ、 ただところどころ禿げた煉瓦道を歩いていた時だった。
最初、その声が自分にかけられた物とは、サスケは思わなかった。
そのまま通り過ぎ様として、慌てた相手に名前を呼ばれ、初めて、サスケは振り返った。
煉瓦作りの槌地塀から、ナルトが顔を出していた。
サスケが自らを振り返った事を認めた彼は、そのまま塀を昇って越えてくる。
軽々と。
身軽な動きだった。
「サスケ。久しぶり。仕事帰り?」
質問に頷けば、ナルトは俺もと笑った。
塀の向こうで何をして居たのかと、サスケに問う気は無かった。
この辺りは駐留軍人の宿舎だ。
裕福な駐留軍人に、身体を売る商売をする人間は、女も男も多い。
聞くだけ野暮だとサスケは思った。
「なあなあ、サスケ。これから遊び行って良い?」
せっかくこうして偶然の再会を果たした訳だしと、ナルトは無邪気に笑う。
また。
サスケの記憶の中の少女も笑った。
ついこの間出会ったばかりの彼は、サスケの中の優しい記憶を掻き混ぜる。
サスケもこのままナルトと別れがたく、ただ彼の望むままに、頷いた。
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