読物

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 ナルトの話しは弟達の事ばかりだった。
聞けば、弟達と出会う前の記憶はあやふやなのだと言う。
彼の記憶は、大空襲直後の瓦礫の山から始まるのだそうだ。
サスケも後に知った事だが、大空襲と言われるあの惨事は、国の主要都市の全てを同時に焼き払ったらしい。運よく生き残った者の内、地方に縁者の居る者は移り住んで行ったが、元より敗色濃厚な当時、爆撃の危険の高い都市部に残っていた者は軍属や、何処にも疎開場所の無い者達ばかりだったのだ。
地獄の様だった。
あちこちで火の手が上がり、多くの怪我人が火を逃れようと水辺に向かう道端には、爆撃でやられた者、途中で行き倒れた者の死骸が転がっていた。
逃げおおせる事に精一杯の人々が、倒れた者を踏み付けてゆく。
侵略軍がやって来て、街に手を付けるまでの二週間程、街は死者に埋め尽くされていたのだった。
たった6年前の事だ。
当時10才だったナルトは瓦礫の窪みで夜露を凌いだという。
もちろんその瓦礫の下にも死者は埋まって居た。
サスケもあの当時はナルトと似たり寄ったりだった。
焼け出され煤けた孤児だった。
食べる物もねぐらもなく。
いつまでこの惨状が続くのか。
終わりを見る前に、自分が息絶えるのが先かとばかりを考える日々だった。
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