読物

□境界線6
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 この戦に負けると言う事は、正常な知性を保って居る者にとっては、明白であった。
けれども。
戦という常軌を逸した状態の中で、おおよそ正常と言うものを保つ事は、非常に難しいのだ。
極端に言えば。
理性と言う物を破壊せねば、戦等と言う破壊行為は出来ないし。
また逆に、指揮系統に理性が無ければ、引き際を誤ると言う物だった。
奈良シカマル。
今は棄てたその姓は、由緒正しい軍閥の家柄を示していた。
彼こそは。
混迷に置いても揺るぐ事を選択する余地のない知性を持って産まれた。
軍略の申し子であったのだ。
「…。この国は間違った。」
「何処でだと君は考える?」
幼いシカマルとチェス盤を挟む男は、割合暢気な口調で応じた。
「セーブルを落とした時点で終結するべきだった。」
「君の父上も、当時それを主張なさった。」
チェスの駒が二人の間を行き来する。
「父は、逝きましたか?」「御立派な最後でした。1番犠牲の少ない作戦で、敵軍の勢力を削いだ。」
しかしそれも、暫くの猶予を稼いだと言う物だった。この二人には歴然とした事実も、正常に作動しない上層部には、理解出来ないのだ。
彼らはまだ、巻き返の可能性を夢見ている。
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