読物

□明るい空
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応えられずに俯く姿に、シカマルはまた心底溜息が出る。「なんか有ったのか?」
忍になって暫く、ナルトがこういった男の相手をしなくなったと思っていたのに。それはまさに、自らの居場所を持ち得たからだと思っていたのに。
それでもまだ、押しかけて来る変質者を拒絶出来ないのは、シカマル一人で勿論ナルト一人で解決出来ない深い問題が、彼の中にあるからだと、シカマルは解っていた。
「べ…別に…。なんも無いってば。」
何も無いけど、寂しかったから。
多分それが、彼がが真面目に考えた結果なのだ。
尋ねた自分が悪かったと、シカマルは天を仰ぐ。高く生い茂った木立の向こうに、僅かな空が見えた。嫌になる。
根が深すぎる。
これ以上は、下手に足を踏み入れてはならない。
それが正解だ。
抜け出せなくなるから。
日常を壊したくないのなら。
でも。
「シカマル…行っちゃうってばよ?」
何時も彼はシカマルの後ろ髪を引くのだ。
ちっぽけで憐れな振りをして。
「サスケが顔出すんだろ?」
「でも、でも、俺ってば…。」
途中で止められたから、身体に残る熱が処理出来ないと言う。
「…風呂…入ったらな。」
なら自分ですれば良いと言いたいのに、口から出たのはそんな言葉だった。
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