読物

□暮色
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 あの日から、ナルトはずっとそこに居た。
冷たい石碑に寄り添って。雨も風も、彼には何一つ感じられなかった。
「サスケ。」
無機質な塊に呼び掛けて。在りし日の彼の背中に寄り添った。

 十八を境に時を留めてしまったナルトの身体は、サスケにおいてきぼりをくった。彼の背中はどんどん広くなり、大きくなって、やがてまた萎んでいった。
「お前は何時までも綺麗だな。」
ナルトの膝に頭を預けたサスケが、頬を撫でた温もりを覚えている。
「サスケも、何時までもカッコイイよ。」
老境に達したサスケは、それでもやはり、ナルトの愛しい人だった。
触れた唇は乾いていて、かつての張りもないけれど、ナルトの胸は脈打った。

 「サスケ。」
御影石は何も返さない。
けれどもその下に、彼の骨があるから、ナルトは離れられない。
「俺も、連れてって…。」乞うても、彼は応えてくれない。
ただこの日は、ナルトに問う者がいた。
「何時までそこにいるつもりだ。」
人の声を聞くのは久しぶりだった。
「ずっと。…ずっと、一緒だから。」
幼い時から、ナルトとサスケは。離れた時でも、喜びと悲しみは常に相手の物だったから。
「そこに、あいつは居ない。」
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