読物

□暮色
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昔のままに冷徹な瞳がナルトを打ち据える。
「じゃあ…サスケは何処に居るってばよ?」
「あいつはもう、何処にも居ない。」
「嫌っ!」
聞きたくないと耳を塞ぐナルトに我愛羅は歩み寄り、その手を無理矢理抑え込む。「それが死だ。」
真っ正面から間近に、それは遅い宣告だった。
「嫌ぁ〜。」
大きな水色の瞳から、大粒の雫が溢れ出す。
拒絶してサスケの墓石に縋る背中は、我愛羅に抱きしめられた。
「俺と来い。ナルト。」
共に生きろと。
耳元に囁かれる吐息の熱さに、ナルトは身をすくませた。

 背後から我愛羅に突き上げられ、爪が石を引っ掻いた。
「サスケ…サスケ…。」
助けてと縋っても、彼は何も言ってはくれない。
「あいつは居ない。」
サスケが老いてから、随分長いことこんな使い方をしなかった器官は傷を負って血を流し、彼の墓石に染みを作った。
独占欲の強いサスケは、ナルトが他の人間と親しくするだけで苦い顔をしたのに。


 「お前…俺が死んだら、我愛羅の所にいけよ。」
黄昏に、彼が笑ったのを思い出す。
「お前と一緒に居られるのは、あいつなんだと分かってた。」
「そんな事言うなってばよ。」
「分かってて、俺はお前を手放せなかった。」
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