読物

□あの日吐いた君の嘘
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 意味も解らなかった君を強引に犯したのは、独占欲が強すぎたせいだよ。


 先に湯を浴びた鳴門が広い客間に、所在なげに座っていた。
彼が居ぬ間に佐介が敷いた布団は二組。
貸し与えた浴衣から覗く足首の、他に比べて華奢なその造作が、佐介に劣情を与えた。
「えと…。」
友人の家に泊まるなど初めての鳴門が、戸惑い、佐介を振り返る。
向けられた唇に、佐介は軽く口付けて。
そのまま鳴門を押し倒した。
「鳴門…。大人がする事をしようか。」
「え…?」
聞かれた意味など理解していない事は分かっていた。けれども無視して。
不細工に巻かれた帯を解く。
「なっ…何?佐介??」
乱暴かと思える程の勢いで浴衣を開けば、ふざけていると勘違いした鳴門が笑う。
日に焼けない薄い腹に舌を這わすのも、くすぐったいと、声を上げる。
「やっ!佐介!いい加減にしろってばよ。」
臍の周りを這い廻る佐介を退けようと延ばした腕を捕まえて、片手でまとめあげて仕舞えば、鳴門はケラケラと身をよじった。
「やだっ!くすぐったいってば。」
無邪気だ。
けれども、そんな誰にでも向けられる表情なんて、欲しくない。
彼を自分だけのものにして、離れられない様にして。
一人ぼっちで無くなるのだ。
孤独でなくなるのだ。
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