読物

□揺るぎの道
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 君の見詰めるその先に、何が有るのか僕は見たい。それは確かな希望ではなく、確たる絶望でもない。
ただ何が待ち受けるか解らない、その不安定さが、僕の気持ちを震わせる。

 「あんたには他人事だから、そんなに暢気な事を言うのよ。サイ。」
サクラが僕を睨む。
その通りだ。
僕は当事者じゃないから、そんな事は当たり前だ。
だけれども。
君と僕との傍らで、ただ遠くばかり見詰める彼の視線。
その眼差しの強さに引き付けられるのは、君と僕と、何一つ変わらないだろう。「なんであんなに真っ直ぐ前だけ見ていられるのかな?」
僕の様に、過去を忘れるわけでなく、感情を封じるわけでなく、何も捨てずに前を向く。
だから。
だからかな?
君の進む先には何かある。そう思えてしまう。

「不思議だなぁ。」
本当に暢気に呟いた僕に、サクラが隣で苦笑した。
 

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