読物

□けぶる宵闇
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 木の葉では、森の向こうに陽が沈む。
暮れ行く空に追われる様に、街の中には灯が燈る。
火影岩のてっぺんはナルトの居場所。
夕暮れに、天のコントラストを眺めるには、此処が一番美しい。
夏に向かい、日暮れを惜しむ蝉の音も、遠く下方に聞こえるのみだ。
明日から暫く里を離れるから。
もう少し、この景色を瞼に焼き付けておこう。
深く吸い込む空気は、深緑を迎える木々の熱気を孕んで濃い。
ふと、その中に嗅ぎ馴れた匂いを感じて、ナルトは振り返った。
「どうした?」
尋ねれば、彼は数歩の距離を詰めて来る。
「中々お前が帰って来ないから。」
お迎えらしい彼の台詞に、苦笑する。
「ガキじゃ無いってばよ。」
ガキの頃ですら、迎えに来る人間など居なかったけれど。
「さっさと帰って荷造りしろよ。」
ガキだよテメーはと、サスケの口許が歪んだ。
どっちがだよとは、口にはせずにナルトは笑う。
サスケはナルトがいないと不安になるから。
だから迎えに来るくせに。素直じゃない。
けれども。
そんな彼のお迎えが、嬉しいナルトも素直じゃない。
「んーじゃ、帰りますか。」
大きく伸びをして、不意に強くなった風を真正面から受ける。
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