読物

□けぶる宵闇
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伸びた髪が舞い、月明かりにキラキラと光る様に見えるのは、サスケの心象風景だ。
きっと、他人に話したら馬鹿にされる。
どんな仕草一つとっても、見とれて仕舞うなんて。
はっきり言って末期も良い処。
自覚していたって手のうち様が無い。
「なあサスケ〜?」
手を繋いで帰りたい。
そんな気持ちになっていたのに。
「こっから家迄競争な。」にんまり振り返ったその顔さえ、可愛いと思えて。
ヒョイと身を翻したナルトに、完全にサスケは出遅れた。
「おっせぇよ。」
火影岩の絶壁を、ナルトの笑い声が滑り落ちる。
余り遅れると後で散々馬鹿にされるだろうから。
「やっぱりガキじゃねーか。ウスラトンカチ!」
舌打ち一つ打って、街の明かりの渦の中へサスケも崖を飛び出した。

 少し先を行くナルトは、追われてケラケラ笑っている。
まるで子供の鬼ごっこの様。
下らないと思いつつも、次第にサスケもつられて仕舞う。
「なーサスケー?」
駆けながらナルトが振り返る。
「明日も競争なー?」
任務の目的地迄。
「一人でやれ。」
「そんで帰りも競争。」
「ふざけんな。」
「負けた方が一楽奢るのな!」
邪気もない。
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