読物

□可哀相な君
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 その小さな身体に、一体何度涙しただろう。
両の腕に収まる赤子の寝顔に、何度胸を締め付けられたろう。
あの偉大な指導者の背中が、こんなにも。
小さな存在に変わって仕舞ったかの様に。
そう思えて仕方がなかったから。
君を見て、哀しくなる他、なかったんだよ。



 子供は、孤独に歪んで育った。
親も無く。
皆が彼を遠巻きにした。
何をしても満たされず。
常にあがく姿が不器用で。彼を目にするにつけ、その惨めさに胸が痛む。
彼に何が必要なのか。
それは簡単に解る事で有ったけれど。
それを差し延べるには、腹に巣くう魔獣への不信感が、邪魔をした。
あの人が彼に遺した物だと信じたら良かったのに、それを正しく彼が受け継いで居るのかと、猜疑心にかられ。
そしてあの人に遠く及ばぬ彼に、無意識に落胆していたのだ。
だから。
三代目から彼のチームの担当を言い遣った時には、酷く迷った。
彼に抱くこの複雑な思い。それが彼に接する事で、どう変わって行ってしまうのか。
その不安。
けれども、これが彼に手を延ばす良い機会かも知れないという期待。
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