愛憎
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07
叫び声…
逃げ惑う人々…
物や人の焼ける匂い…
「2人とも早く逃げなさい!!」
燃えて今にでも崩れそうな屋敷。
傷だらけになりながらも男は銃を握りしめ言い放った。
「でも…!お父さんは!?」
「エリザ………お前たちは生きなさい…」
屋根が崩れ男の姿は見えなくなった。
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ーーー
ーー
ー
「お父さん……」
目が覚めたエリザはしばらくして外が騒がしいことに気付いた。
またクルー達がどんちゃん騒ぎ出したのだろうか?
夏島といえど夜は少し冷えるため薄い長袖を羽織り甲板へ向かった。
エリザのクルー達が騒いでいるという考えはハズレだ。
扉を開けた時、目に入ったのはMARINEの文字。
海軍の襲撃があったのだ。
しかし数は少なく不思議に思ったエリザは手すりまで走り下を覗く。
バーベキューをしていた浜辺にはこちらに向かってくる海軍と戦うハートの海賊団。
海にはこちらに向かってくる軍艦もいた。
「アイヤー!!!
…あ!!エリザ何で出てきてるんだよ!」
1人の海兵に蹴りをいれたベポがエリザの存在に気付き驚く。
「ベポ…ごめんね…」
エリザはベポにそう一言言うと甲板から浜辺へ飛び下り走り出した。
「エリザ!?」
ベポも急いで浜辺へ下りるがエリザは海軍のもとへ走っていた。
「大佐!女がこちらに向かってきます!」
「武器は持っていない模様!」
「もしや捕まっていた一般人かもしれん…!
保護しろ!!ただし気は抜くな!」
「「はっ!!」」
エリザに気付いた海軍は保護しようと走ってきた。
そのことに気付いたエリザは捕まっていた女を演じるため泣きそうな顔をする。
「大丈夫ですか!!」
「あなたは我々が保護します!」
「は…はいっ……!ありがとうございます…!!」
海兵の1人がエリザを支え、もう1人が周りを警戒する。
3人が再び走り出そうとした時、周りが大きな青い膜に覆われた。
「何だ!?」
「(ちょっとちょっと…!!)」
エリザは焦った。
ハートの海賊団から逃げ出せる絶好のチャンスだったのに…。
思った通りエリザの姿は海兵2人の前から消え、代わりに丸太が転がっていた。
消えたエリザはローの隣に立っていた。
「ちょっと…!」
ローに文句を言おうとしたが片手で顔全体を押さえつけられる。
「“死の外科医”トラファルガー・ロー!
その女性を離せ!!」
手はエリザの顔を押さえつけたままローは海兵の方を向いた。
エリザはローの手を退かそうと必死にもがく。
「そいつは出来ねぇ相談だな…
コイツは俺のもんだ。」
急に押さえつけられていた手の力が無くなり前のめりにエリザがなりかけた時、顎を掴まれる。
「ぇ…」
そのまま上を向かされキスをされた。
一瞬のことでエリザは動けなかった。
「アイー!エリザー!!」
唇を離され放心状態のエリザのもとにベポがやって来て抱きついてきた。
「お前海軍のところに向かうから心配したぞ!大丈夫か?」
ハッと我に返ったエリザはローを睨み付けた。
「何するのよ…!」
「ベポ」
「アイアイ!」
エリザの言葉を無視しローはベポに命令をしてエリザを運ばせた。
急にベポに担がれ驚くがすぐに下ろすように抗議する。
「ベポ!下ろして!!」
「エリザごめん…キャプテンの命令だからそれは無理。
それに俺まだエリザと一緒にいたいんだ…!」
ベポの言葉に少し胸が痛んだような気がした。
エリザを抱えたままベポはハートの海賊団の船へ向かっているらしい。
どうやらログが溜まったらしくこの島から去るようだ。
「そんなに俺達と親しく話してていいのか?」
隣を走っていたローがニヤリと笑いながら後ろを顎で指す。
「あの女トラファルガーの女だったのか…!」
「くそっ…!騙された!!」
完璧にエリザは“捕まっていた女”ではなくなっていた。
「ちょっと…!捕まってたのは本当だって…!!!私は海賊じゃないわよ!!!」
「残念だったな…もう遅ぇよ…」
人質がいると慎重だった海軍はエリザをローの仲間だと認識し、一斉攻撃を仕掛けてきた。
ローは能力を使い海軍の足止めをし、ベポはエリザを担いだまま甲板へ到着した。
「キャプテンが潜水準備だってー!」
ベポがクルー達と船内へ入り潜水準備をし始める。
ベポから解放されたエリザは再び浜辺へ下りようと手すりまで寄ったが甲板へ上がってきたローに阻止された。
「まだ懲りねぇのか…!」
「言ったでしょ!私は賞金稼ぎ!海賊が嫌いなのよ…!!」
1つ舌打ちをするとローはエリザを無理矢理船内へ連れて行き扉を閉めた。
ハートの海賊団は軍艦から大砲を撃たれ船が揺れたが、ギリギリの所で海軍から逃げることに成功した。
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