忍ぶる恋

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「わしの名は大川平次渦正、この忍術学園の学園長じゃ。」


学園長の庵では学園長の正面に加弥乃が座り、出入口である襖の前には忍術学園の教師達が座っていた。


「…加弥乃と申します、姓はありません。
この度はこちらの学園の先生方に助けていただいて…ありがとうございました。」

「よいよい。
して、お主はどこの忍かの?
何故あの村におったのかも気になるんじゃが。」


教師達からの視線がヒシヒシと伝わってきた。

きっといつでも戦闘態勢に入れるように武器に手をかけているのだろう。


「私のことを詳しくお話しすることでこちらの学園にご迷惑をおかけすることになります。
どうかこのまま私を追い出してはくれませんか?」

「ふむ…。
しかし、このままお主を追い出すというのは新野先生と保健委員会が許さんだろう…。
それに、土井先生の知人だと聞いたが?」


チラリと横目で半助を盗み見て、小さくため息をついた。

どうやら話さなくてはいけないようだ。


「……はい。
土井半助は私の先輩にあたる方です。」

「では、土井先生が昔いた忍者組織がお主が所属している所かの?」

「………はい。」


加弥乃がそう答えると後ろから首元にヒヤリと冷たいものが当てられた。

この行動から半助が抜忍であることを、学園の先生達は知っているのだとわかる。


「お主は半助の首でも取りに来たのか?」

「……いいえ。」


加弥乃は微動だにせず学園長の問いに答え、話し続ける。


「土井半助と言う人間は既に死亡していることになっています。」

『!!』

「山田先生…でしたか?
あなたは6年前に先輩を助けた方ですよね?」

「…何故それを?」


後ろで加弥乃の首元に苦無を当てる伝蔵の手に力が入る。


「あの時、私もあの場にいました。
土井半助は深手を負い崖から落下、死亡したと報告しました。」

「何故そんなことを…。
いや待て、あの時私は男の忍と会ったはずだ。」

「あの男は私が殺しました。
その証拠に、今まで先輩は追っ手から狙われていませんね?」


その場の空気がまた変わっていく。

動揺、疑い、殺意…様々だ。


「加弥乃っ…」
「何故仲間を裏切るようなことを?」


何か言いかけた半助の言葉を学園長は遮り、話を続けた。


「……恩返し…とだけ言っておきます。
それに私はあの組織で育ちましたが、一度も仲間だと思ったことはありません。」

「まぁ良かろう…。
では次じゃ。何故あの村におった?」


あの村に起こった出来事がフラッシュバックし、加弥乃はかすかに動揺した。

伝蔵は学園長の目配せから加弥乃の首元の苦無を離し、もとの位置に座る。


「あの村は深手を負った私を手当してくれました…。
痕跡を消して村から出て行きましたが、私の居場所は既にバレていたようで…村が襲われました…。」

「何故追われていたのじゃ?
任務の失敗か?」

「いいえ…」


加弥乃は真っ直ぐ学園長の目を見る。


「私は抜忍です。」





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