忍ぶる恋

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深夜、忍術学園に忍び込む1つの人影があった。


「(土井半助。今日こそは…!!)」


タソガレドキ忍者の諸泉尊奈門だ。

入浴中の隙だらけの半助を狙うらしい。


「ふぁ〜あ…。遅くなってしまったな…。」

「(いた…!)」


あくびをしながら廊下を歩く半助を見つけ、尊奈門はこっそり後をつけた。

風呂場と思われる部屋へ入る姿を確認すると、尊奈門は天井裏へ侵入した。

そっと中の様子を覗くと、半助は湯船に浸かっていた。

しかし、何か様子がおかしい。


「(…あんなに小さかったか…?
それに何だか…腕も細いような…)」
「誰?」


風呂場にいた人物に石鹸を投げられ、天井から尊奈門は落ちてしまった。


「いててて…。」

「あなたどこの忍…?」

「あなたって…え?」


顔を上げた尊奈門は目の前の人物を見て固まる。

目の前には標的としていた半助ではなく、手ぬぐいを巻き付けて体を隠す加弥乃の姿だった。


「おっ、おおお女ぁぁー!?
土井半助は女だったのか!!??」

「は?」

「加弥乃どうしたんだ!?」


大きな物音と尊奈門の叫びに半助が勢いよく戸を開ける。


「先輩、いきなり戸を開けるのは非常識じゃないですか?」

「うわわわ!!すまん!!
って、お前は何て格好してるんだー!!!」

「入浴中なんですから仕方ないじゃないですか。」

「もっと恥じらいを持て!!!」


加弥乃は半助が持ってきた寝間着を肩にかけられる。


「まったく…。
で、諸泉尊奈門は何故風呂場にいる!!」

「わっ、私は土井半助、お前を倒すために後をつけていただけだ!!!」


顔を真っ赤にした尊奈門は加弥乃を隠すように立つ半助を指さす。


「私は加弥乃が入浴中だと貼り紙がしてあったから外で順番を待っていただけだ!!!
勝手に早とちりしおって!!!」

「加弥乃…?」


加弥乃と言う名前に尊奈門は、半助の後ろから顔を覗かせる加弥乃の顔をよく見た。


「あー!!」

「あ。」

「え?」


尊奈門と加弥乃の声に半助は2人を交互に見る。


「な、何だ?」

「この人、この前町で会いました。
先輩が山田先生のおつかいで戻っている間に…。」

「何ぃ!?」


余計に警戒を強める半助に尊奈門は誤解だと話す。


「私は彼女が土井の知人だとは知らん!!
それにそんな警戒される覚えはないぞ!
私は彼女を助けたんだからな!!」

「確かに助けてもらいました。」

「そんな話初耳だぞ!?」

「だって話してませんし。」


半助はため息を吐き頭を抱えた。

そんな半助の前に出て加弥乃は尊奈門に話しかける。


「あの時はお世話になりました。」

「いえいえ…って、その格好で近付くなぁー!!!」

「加弥乃、お前遊んでるだろ…。」

「バレました?」


引き戻され再び半助の背に加弥乃は隠された。

ふと、尊奈門は2人の仲の良さに疑問を持つ。


「土井半助!お前は…加弥乃さん…と、どういう関係なんだ!!」

「土井先生は加弥乃ちゃんの先輩だよ。」


新たな人物の声に半助が振り返ると加弥乃の隣に雑渡昆奈門が立っていた。


「お前は雑渡昆奈門!!」

「組頭!!ご存知なんですか!?」

「加弥乃ちゃんとは昔の知り合いでね。」

「雑渡さんこんばんは。」


加弥乃と昆奈門が顔見知りだったことに驚く半助と尊奈門。

昆奈門は尊奈門のことを楽しそうな目で見ながら近付く。


「この前の休暇から帰ってきて様子がおかしかったのはこういうことだったんだね。」

「く、組頭…?」

「ま、私は応援してあげてもいいけど、チョークと出席簿のガードは固いよ。」

「しっ、しし失礼します…!!!」


昆奈門が尊奈門に囁くと、尊奈門は顔を真っ赤にして風呂場から姿を消した。


「それじゃ、お邪魔しました。」


続いて昆奈門も姿を消し、残された加弥乃と半助は呆然とする。


「何だったんだ…?」

「さぁ…。
あ!サイン貰ってませんでした。」

「小松田君じゃないんだからやめなさい。」


その後、面倒くさがって忍たまの風呂場を使っていた加弥乃は、くの一の風呂場を使うようにと半助に叱られた。





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