人魚夢想曲

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「もう少しで忍術学園だ。
奏、足は大丈夫か?」

『はい、鼻緒に布を付けてきたので前ほど痛くありません』

「歩けなくなったら俺がおぶってやるから安心しな。」

「いいえ兄貴、その時は俺が奏さんを運びますのでご安心ください…!!」

『あの、大丈夫ですので…』


奏は数日前の話し合いで決まった兵庫水軍と親しいという忍術学園へ、第三協栄丸、義丸、白南風丸と共に向かっていた。

忍術学園までの道のりはそれなりにあり、山なのか森なのか…とにかく周りに木々が生い茂る道を歩いていた。

舗装などされていないこの時代のでこぼこ道を慣れない草履で歩くのはかなりキツいが、弱音を吐くわけにはいかない。

せっかく靴擦れ対策として草履の鼻緒にクッション代わりに比較的柔らかい布を付けてきたのだ。

歩ききってみせると言う意地半分、迷惑をかけたくないと言う思い半分だ。


「(うぅ…でもやっぱり痛い…。)」

「お!鐘楼が見えてきたぞ!!
あと一息だ!!」


第三協栄丸の声に前を向くと少し離れた所に高い建物が見えた。

もう少しだと気合を入れて奏は前の3人に続いて歩き出した。





ーートントン


立派な木製の門に辿り着き第三協栄丸が扉を叩く。

少しするとなんともゆるい声が聞こえ扉が開いた。


「あ!兵庫水軍の皆さんお久しぶりです〜!」

「やぁ、小松田君。
新野先生に用があるんだがいらっしゃるかな?」

「はーい!ご案内するので入門表にサインをお願いします〜。」


事務の文字が入った忍者のような服を着た青年…小松田の持つバインダーに順番ずつ名前を記入する。


「一ノ瀬奏さん?
初めましてですね。
僕は事務員の小松田秀作です!
よろしくお願いします〜。」


笑顔の小松田に少し緊張していた気持ちが和らぎ、奏も笑顔でペコリとお辞儀を返した。

小松田の案内で学園内を歩いていると、突然の衝撃とともに奏の視界には丸い青空が広がっていた。


「!?」


何が起こったのか理解出来なかったが、奏は自分が仰向けに倒れていることに気付いた。

しかも、周りは土の壁に囲まれている。


「(これは…落とし穴…?)」


自分が落とし穴に落ちたことを理解し、背中にじんじんと痛みを感じ始めた。

幸い土は柔らかく、大きな怪我は無かった。

起き上がって立ってみたが穴の深さは意外とあるようで、自力で穴から這い上がることは出来そうにない。

義丸達がすぐに顔を見せないことから、1番後ろを歩いていた奏が落とし穴に落ちたことに気付いていないのだろう。


「(どうしよう…。)」


声も出ないため誰にも気付いてもらえないことに顔を青くする奏は、何か役に立つものは無いか手持ちの荷物を確認する。


ーーカサッ…


「!!」


懐に手を入れた奏の指先に紙の束が触れた。





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