人魚夢想曲
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木陰で昼寝をしていた乱太郎、きり丸、しんベヱのもとに風に乗って何かが飛んできた。
「何だこれ?」
「折り紙かな?でも見たことない形だね…。」
「あ!何か書いてある!」
見たこともない形をしている折り紙を広げるとそこには文字が書かれていた。
「なになに…『落とし穴に落ちてしまいました。どなたか助けてください。』…だって。」
「また綾部先輩の落とし穴〜?」
「誰が落ちたか知らねぇけど、まぁ、誰かしら通りすがりに気付くから大丈夫だな。
さ、寝よ寝よ!」
「…。」
「乱太郎、黙ってどうしたの?」
紙の文字を見つめたまま何か考えている乱太郎にしんベヱが声をかける。
「私、この文字どこかで見たことある…。」
「そりゃあ忍たまの誰かなんだから委員会か何かで見たことあるだろ。」
寝そべって興味無さそうにあくびをするきり丸だが、乱太郎は何かが引っかかっていてその文字が気になってしょうがなかった。
「最近見た気がするんだ…忍術学園じゃなくてもっと別の場所で……あ!!!」
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「(誰か気付いてくれるかな…。)」
未だに誰も顔を出さない丸い空を見上げ、奏は何個目になるかわからない紙飛行機を折り始めた。
「あ!ここ!!
同じ紙が落ちてるよ!!」
子供の声が聞こえ、再び見上げると3つの人影がこちらを覗き込んでいた。
「あの時のお姉さんだ!!
乱太郎の言った通りだ!!」
「お姉さん大丈夫ですか!?」
「俺誰か呼んでくる!!」
きり丸が呼んできた通りすがりの6年生立花仙蔵と奏がいない事に気付いて探していた義丸によって、奏は無事穴の中から脱出することが出来た。
「誠に申し訳ありませんでした。」
医務室にて、落とし穴に落ちた際に出来たかすり傷の治療が終わった奏の前で、2人の生徒が頭を下げていた。
奏を穴から出してくれた6年い組の立花仙蔵と4年い組の綾部喜八郎だ。
『大丈夫ですのでもう気にしないでください』
「そうはいきません。
私の後輩の掘った落とし穴のせいで、兵庫水軍のお連れの方に怪我をさせてしまったのです。
私の監督不行き届きです。
喜八郎!お前もしっかり謝らんか!!」
「…すみませんでした。」
奏は困ったように笑いながら、先程治療の際に乱太郎から聞いたことを思い出して五十音表を指差していく。
『落とし穴も忍者の罠の1つだと聞きました
皆さんは忍者になるため勉強中の生徒さんです
失敗するのは当たり前だと思います
今回のことは私の不注意でもありますし、この通りかすり傷だけですみましたが、一般人にはわからないほど上手く落とし穴が出来ていたからこそ、次はこんなことが起こらないように注意してください
それではダメですか?』
奏の言葉に2人は驚いたような顔をし、再び深く頭を下げ医務室を後にするのだった。
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