十人十色
□.
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「あの…。
実はあなたに、助けてほしい人がいて…。」
2個目のおにぎりを食べ終わった小夜左文字は、少し言いづらそうに話を切り出した。
「小夜左文字様…もしやあの方を…?」
「待て、それは危険だ。
あいつがどんな行動に出るかわからんぞ。」
「でも…。」
私だけが話に付いていけず置いてけぼりだが、へし切長谷部に反対されても小夜左文字が助けたいと思う人がいることはわかった。
「だれか、じゅうちょうのひとがいるんですか…?」
「主様、そうではないのですが…」
「長谷部君ー…ってあれ?小夜君もいたんだ……え?」
皆少し気が緩んでいたのかもしれない。
へし切長谷部も小夜左文字も誰かが近付いてくることに気付かなかったのだ。
ばっちり私と目が合うのは先程までここにいた燭台切光忠だ。
「えっと……もしかして、主…かな?」
驚きながらそう言葉を紡いだ燭台切光忠の声を聞いて我に返ったのか、へし切長谷部は燭台切光忠を押さえつけ小夜左文字は私の手を取り走り出した。
後ろから痛がる燭台切光忠の声が聞こえた。
「こちらでございます…!!」
私と小夜左文字の先を走るこんのすけが誘導してくれている。
驚いているだけで特別敵意は感じなかったが、刀剣男士と遭遇してしまった。
母屋へ来る機会は今日限りでほぼ無くなるだろう。
小夜左文字に手を引かれながら走る中、私は先程の助けてほしい人がいると言う小夜左文字の言葉を思い出した。
「ねぇ…さっきの、たすけてほしいひと…いいの?」
「!!」
「主様!?
今はご自身の身の安全をお考えください…!!」
小夜左文字の足が止まり、こんのすけが焦り出す。
「だって、じゅうちょうじゃないんでしょ?
わたちが、ちょくせついかなきゃいけないんじゃないの?」
「そ、それは…。」
こんのすけの反応からするとどうやら図星らしい。
「こんどはいつこっちにこれるかわからない、から、いまちかないんじゃないの?」
私は食い下がった。
へし切長谷部に反対されても助けたいと小夜左文字が願ったのだ。
どういう状況なのかはわからないが、重傷では無いとすれば私が審神者になってから…またはずっと前からその人はずっと助けを待っていることになる。
こんのすけも何も言わなかったのは、へし切長谷部が言ったようにその人が私に対してどんな行動をするか不安だったからだろう…。
「たすけたらすぐにげる、じゃだめ?」
「しかし…」
「ぼ、僕が守る、から…!
止めるから…!!」
2人に訴えられこんのすけが折れそうになった時、こんのすけの後ろの曲がり角から誰かがやって来る気配を感じたが、身を隠すなり逃げるなりするには遅すぎた。
「さっきから何騒いでんだ?」
顔を出したのはまだ会ったことのない刀剣男士だった。
「………おい、小夜。
誰だその人間…。」
私と目が合うとその刀剣男士…和泉守兼定は眉間に皺を寄せた。
小夜左文字は庇うように私と和泉守兼定の間に立つ。
「新しい審神者か…?」
「い、和泉守兼定様!落ち着いてくださいませ!!」
腰の刀に手をかけた和泉守兼定を見て慌てて宥めようとするこんのすけ。
私は初めて面と向かって自身に向けられた殺意に、思わず小夜左文字の服をぎゅっと掴む。
気付かぬうちにその手は震えていた。
「…和泉守さん、邪魔しないで。」
「小夜、わかってるのか…?
人間だぞ…俺達が何されたかわかってんのか…!?」
叫ぶと同時に抜刀する動きが見え、小夜左文字は再び私の手を取り来た道を引き返して走り出した。
どこをどう走ったのかわからないが、ある一室に飛び込み小夜左文字は障子を閉めた。
私はその部屋に入った瞬間嫌な感じがした。
「お願い…その人を、助けて…!」
その嫌な感じは部屋の中央にある、一振の刀から感じられた。
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