十人十色
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「きゃー!!姫様似合ってる〜!!」
「うわぁ…。
乱ちゃんよくこれで動き回るね…。」
熱が出てから数日、すっかり体調が戻った頃に私はまた成長し、十一歳の姿になっていた。
今までと違って髪は背中まで伸びている。
恐らくこれは、私が小学校高学年の頃に髪を長く伸ばしていた時期があったからその影響だろう。
そして、それに目敏く反応したのが乱ちゃんだ。
成長したことで乱ちゃんと同じくらいの身長となった私は、頼み込まれて乱ちゃんの洋服を着ているのだった。
内番服ではなく、粟田口お揃いの様なデザインのアレだ。
半袖の為、腕にある印を隠すための包帯が見えてしまっているが仕方ない。
「えへへ〜!
ボク達姉妹みたいじゃない?
いち兄達にも見せなきゃ!!
あ!お買い物も行こうよ!!」
「えぇ〜!?」
乱ちゃんに連れ回され、一期のもとへ行ったり、写真を撮ったり、髪を弄られたりといろいろやった挙句、私は今外出をしようとしている…。
審神者や刀剣男士、政府関係者が利用する特別な町があるそうで、いつも皆はそこで買い出しをしているらしい。
まだ子供の姿なので外出は抵抗があったが、話によると審神者の家族も利用することがあるらしく、子供がいてもおかしくないとのこと…。
それならば是非行きたい。
「乱、平野、姫様を頼みましたよ。」
「はーい!」
「はい!」
メイクで顔の印を隠して準備が出来た私の外出には、乱ちゃんと本日の近侍である平野君が一緒だ。
内番や当番が残っているので同行は出来ないが、一期、堀川君、兼さん、歌仙、光忠が見送りに来てくれた。
「姫様、おつかいもお願いしますね。
買うものメモとお財布入れておきますから。
それから、乱君と平野君から離れないようにしてくださいね。」
「堀川君、私中身二十五歳だから。
初めてのおつかいじゃないから。
見た目もそんなに幼くないから。」
まるで初めてのおつかいをする子供に言い聞かせるように、堀川君がメモとがま口財布を私のポシェットの中に入れる。
「あはは…ごめんなさい、つい。」
「無駄遣いすんじゃねぇぞー。」
「兼さんじゃないから大丈夫ですー。」
「はぁっ…!?
お、俺は………!!」
堀川君の後ろから兼さんが同じく子供に言うようなことを言うので言い返した。
何か言いたげだったが悔しそうに何も言ってこないのは、図星だからということを私は知っている。
前に歌仙と堀川君に注意されてるの見たからね。
「あまり羽目を外し過ぎないように気を付けるんだよ。」
「本当は僕達も一緒に行けたらいいんだけど、当番があるからね…。
あ、暗くなる前に帰って来てね?」
「………私が成人してる大人だってこと忘れてません??」
歌仙と光忠までそんなことを言うので少しげんなりしてきた。
「もー!皆心配しすぎ!!
いつものお買い物だよ?
ボクと平野がいるんだから安心してよね!」
「お任せ下さい!
しかし皆さんご心配のようなので、なるべく明石さん達と合流するように致しましょうか?」
プンプン怒る乱ちゃんが抱き着いてきて不満そうにする横で、平野君は先に外出した来派の明石と蛍丸君と愛染君の三人と合流することを冷静に提案する。
「ふむ…そうだね…。
人数は多い方が安心出来るね。」
「愛染殿はしっかりしていますから安心ですな。」
「蛍丸君も頼りになるしね。」
「そうですね!」
「大太刀のあいつがいれば絡んでくる奴もいねぇだろ。」
各々が合流することに賛成したようだが、誰一人明石に触れなかったのは気にしないでおこう…。
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