十人十色

□.
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多くの人々が行き交う道。

たくさん並ぶ建物、店。

本丸と演練場以外の場所に来て、私は年甲斐もなくはしゃいでしまいそうな気持ちになる。


「姫様、ここは可愛い小物がいっぱいあってね、ここのお団子はとっても美味しいんだよ〜!
あ!ここはね〜…」

「乱兄さん!蛍丸君が話していたお店に行ってみないと合流出来ませんよ!!」


嬉しそうに私に案内をする乱ちゃんに対して、平野君は明石達と合流しようと乱ちゃんの行動を止めようとしていた。


「え〜…ちょっとくらいいいでしょ〜。
姫様とお出かけしてるんだよ?
ほら!平野だって嬉しいでしょ?」

「そ、それは…。」


目を泳がせる平野君の様子からするに、どうやら図星のようだ。

そんな様子が可愛くて私も嬉しくなり、二人の手を取りお団子屋さんに向かう。


「お団子買ってから三人を探しに行こう?
二人とも、もっと案内してくれる?」

「もっちろん!!」

「ひ、姫様がそう仰るなら…!!」


私がそう言えば乱ちゃんは笑顔で嬉しそうにし、平野君は少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに返事をしてくれた。


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「本当にいろんなお店があるんだね。」

「はい、現世に行かずともこの街や通販で必要な物が全て揃うように手配されているようです。」

「皆いちいち現世まで行ってたら大変だからね〜。」


お団子を食べ、タコ焼きを食べ、乱ちゃんとお揃いのヘアピンを買い、粟田口の皆へのお土産の駄菓子とおつかいの調味料の入った袋を片手に、私達はラムネを飲んでいた。

食べ歩きをしてお菓子を買ってラムネを飲みながら歩くなんて…こんな子供のような買い物……めちゃくちゃ楽しい。

すごく子供に戻った気分だ……いや、実際見た目が子供なんだけどね…。


「あの三人なかなか見つからないね〜。」

「今日はこの周辺のお店に行くと聞いていたのですが…。」


私達は買い物を楽しみながらもちゃんと明石達を探していた。

何度か明石や蛍丸君、愛染君を見かけはしたが、他の本丸の男士だった。

演練の時もそうだったが、不思議なことに見ただけで自分の本丸の男士なのかがわかるのだ。

実感は無いけれど、無意識に霊力を感じて判断をしているらしい。


「姫様!あそこのわらび餅買ってきてもいい?
美味しいって評判なんだ!」

「うん、お土産にしよっか。」


乱ちゃん、平野君と続いて私もお店に向かおうとした時、私の被っていた乱ちゃんの帽子が風で飛ばされて、私のすぐ後ろに落ちた。

急いで拾った帽子を被り直した時、目の前に誰かが立っていた。





「やぁ、こんのすけ。」

「おや、おかえり。」

「只今戻りました!」


本丸では、黒橡達と入れ違いにこんのすけがやって来た。

厨に顔を出したこんのすけは燭台切光忠と歌仙兼定に挨拶をすると、黒橡と近侍の平野藤四郎の姿が見当たらないことを伝える。


「主なら乱と平野と買い物に出かけたよ。」

「左様でございましたか…。」

「何か用があったのかい?」

「皆様に限って心配は無いかと思いますが、少しご報告がございまして…。」


こんのすけの報告を聞いた歌仙兼定と燭台切光忠は、一気に顔色が悪くなった。





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