人魚夢想曲

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高熱と泣き疲れのせいか、気を失うように眠ってしまった奏は自室の布団で寝かされ、その晩は義丸が奏の部屋の隅で見張りをしていた。

翌朝、義丸は奏の事情を知っているメンバーに昨夜見たことを話し、詳しい事情を聞くため奏が目覚めるのを待つことになった。


「おぉ!起きたか!!」

「(由良四郎さん…?)」


半分程開いた障子の外から由良四郎が振り返り声をかける。

寝起きでぼーっとしていた奏だが、昨晩の出来事を思い出し瞳に恐怖の色が出る。


「昨日のことは義丸から聞いてる。
しばらく交代で周りを警戒したが特に何も無かったから安心しろ!」


交代で見張りをしていてくれたことがわかり、申し訳なさと感謝でいっぱいだった。


「詳しく話を聞きたいんだが…熱はどうだ?」

「(あ…何か書くもの…)」


奏が何を探しているか気付いた由良四郎は忘れていたと巻物を取り出した。

巻物を広げるとそこには均等に文字が並んでいた。


「(これは…50音表…?)」

「綱問達が体調が悪いと文字を書くのが大変だからって作っててな。
これなら指差すだけでいいだろ?」


ゆっくりと起き上がった奏は早速50音表を指差す。


『ありがとうございます
綱問君達にも伝えていただけますか?』

「おう!
アイツらきっと喜ぶぞ!」


その後、奏の事情を知るメンバーが部屋に集まり、奏は昨夜の出来事を伝えた。


「そうか…怖かっただろうに話してくれてありがとな!」

『いえ、私が紙をちゃんと処分していれば…』

「お頭、それなら俺にも非があります。
もっと警戒しておくべきだった…。」

「謝らないでください
あの時、義丸さんが来てくださって本当によかったです」


曲者が去ったのは義丸が来る気配に気付いたからかもしれない。

義丸が来なかったら奏はどこかへ攫われていたのかもしれないのだ。


「とにかく何か対策をしないとな…
話を聞くと曲者は忍の可能性が高そうだ。
一度忍術学園に相談してみるか…。」

「(しのび…忍術…忍者だ!本当にいるんだ!!)」


話はどうやらその忍術学園とやらに相談する方向になっており、奏が熱を出した時に診てくれた先生は忍術学園の校医だそうだ。

奏の風邪と喉も診てもらうため、体調が良くなったら奏も一緒に向かうこととなった。





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