魔法の愛言葉
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この話は原作沿いですが、一部の登場人物は生きる予定になっています。
原作ではシリウスの一人称は“僕”“わたし”ですが、この夢小説では“俺”または“わたし”に設定しています。
以上のことに納得がいかない方はお戻りください。
「嘘でしょ…?
冗談はよして…」
「嘘じゃないんだロッテ。これは事実だ…」
絶望的な目をしたロッテにリーマスははっきりと話した。
「シリウスはジェームズとリリーを売ってピーターまでも殺したんだ。」
ロッテから目を反らし、苦しそうにリーマスは言った。
ロッテは力無く椅子に座り込み、顔を両手で覆う。
「そんなことない…何かの間違いよ…シリウスがジェームズ達を裏切るはずないもの……。」
リーマスはそっとしておくべきだと考え、部屋から出ようとしたが、ロッテの苦しそうな声にすぐに振り返った。
「うっ…」
「ロッテ!?」
ロッテは自分のお腹を抑えていた。
「ロッテ、君まさか…!」
キングズ・クロス駅―――。
「まったく…。
いくら私が姿くらましが出来るからって、こんなギリギリまで引き止めないでほしいわ…!」
東洋系の顔立ちをした女性が元同僚の顔を思い浮かべて文句を言いながら、ホグワーツ特急を目指して歩いていた。
彼女の髪は黒く、瞳は左がブルー右はヴァイオレットのオッドアイだ。
「あ!ロッテ!」
「ロッテもホグワーツ特急に乗るのね!」
様々な生徒に声をかけられながらロッテはホグワーツ特急の一両目に乗り込んだ。
ロッテは聖マンゴ魔法疾患障害病院に用事があったため、ホグワーツまで生徒達と一緒に向かうことになったのだ。
ホグワーツと聖マンゴ魔法病院を行き来することが多いロッテがホグワーツ特急に乗ることは珍しいことでは無かった。
そしてロッテには聖マンゴ魔法病院のことだけでなく、もう一つ用事があった。
「どこのコンパートメントにいるか聞いておけば良かった…。」
人を探しているのだ。
とりあえず全ての席を端から順番に覗いていった。
しばらく探したが、目的の人物は見つからず溜め息混じりに違うか…と呟くと後ろから声をかけられた。
「やぁロッテ!」
「コンパートメントをお探しかい?」
後ろには顔がそっくりな赤毛の少年が2人立っていた。
「こんにちはフレッド、ジョージ。」
「コンパートメント探してるなら俺達の所に来たら?」
「1人分空いてるよ?」
恐らく悪戯好きのメンバーが集まっているコンパートメントだろう。
「お断りするわ。
今、人を探しているの。」
「「なんだ、これじゃあロッテに悪戯出来ないな。」」
「……あんた達それが目的でしょ。」
フレッドとジョージと別れたロッテは再び人探しを再開したが、生徒達に声をかけられるためなかなか思うように進まない。
「ホントどこにいるのかしら…?」
「あっ!ロッテ丁度良かった!!」
近くのコンパートメントから勢い良く出て来たハッフルパフの女子生徒にロッテは引き止められた。
「この子を診てあげて!」
少女が指差す方には顔を青くしてぐったりしている新入生の少女がいた。
ロッテが診ると、どうやら何か毒虫に刺されたようだった。
誰かのペットにでも刺されてしまったのかもしれない。
ロッテは目的の人物に会うことを諦め、目の前の少女の治療に移った。
「ホグワーツの先生には連絡しておいたから大丈夫。
ホグワーツに着いたら一緒に医務室へ行きましょうね。」
治療が終わってからもロッテはそのコンパートメントにいた。
治療した新入生の少女、アニスが心細くし涙ぐんでいたこともあるが、同じコンパートメントにいた少女達の話し相手にもなっていたのだ。
気付くと時刻は1時近くを差していた。
車内販売のおばさんからお菓子を少し買い、蛙チョコレートを1つとっておいた。
「ロッテ、蛙チョコレート食べないの?」
「あぁ…、ちょっと人に渡すの。」
ハッフルパフの少女の問にロッテは曖昧に笑って答えた。
すると突然汽車が速度を落とし、停車した。
「着いたの…?」
ロッテの隣にいたアニスが聞いてきた。
「いいえ…、まだ着くには早いわ…。」
ロッテが真剣な顔付きになって辺りの様子を伺いながら答えた。
その直後、車内の明かりは全て消え、辺りは闇に包まれた。
空気が冷たくなり、まるで冬のようだ。
窓の外を見れば激しい雨の中、黒い影がふよふよと飛んでいるのが微かに見えた。
「ルーモス! 光よ!」
杖に明かりを灯すとコンパートメント内のアニス達に外へ出ないように注意し、ロッテは通路へ出た。
その際ドアに“護”の文字が書かれた札を一枚貼った。
ロッテの名前はロッテ・アベ・チャロア。
魔法界でも有名な日本の陰陽師安倍家の分家なのだ。
慌ただしく車内を回り、他の生徒達にもその場から動かないように注意すると同じようにドアに札を貼った。
早歩きで車内を進んで行くと黒い影がホグワーツ特急に乗り込んでいるところだった。
「エクスペクト・パトローナム! 守護霊よ来たれ!」
ロッテの杖から光が溢れ、その光から逃げるように黒い影――吸魂鬼(ディメンター)は逃げて行った。
汽車の扉を閉め、ロッテは再び車内を回った。
「(やっぱり…彼を探しているのね……。)」
ロッテが再び歩き出そうとした時、少年の叫び声が聞こえた。
声のした方に走って行くと吸魂鬼がコンパートメントを覗いていた。
「行って!」
ロッテの声に反応した光は狐の姿になり、吸魂鬼を追い払った。
「大丈夫!?」
コンパートメントの中にいたのはフレッド、ジョージ、リー・ジョーダンそして…酷く脅えた様子のドラコ・マルフォイだった。
「「「ロッテ…!!」」」
「チャロアッ…!?」
フレッド、ジョージ、リーの3人に質問攻めになりそうだったが、ロッテはそれをかわしコンパートメントから出ないようにだけ言い、札を貼って去っていった。
マルフォイは恥ずかしそうな怒ったような顔をしてロッテを睨んでいた。
最後尾に差しかかったところで再び吸魂鬼の姿があった。
今度の吸魂鬼はコンパートメントに入りかけている。
すぐに守護霊の呪文を吸魂鬼に向けると、それと同時にコンパートメントの中からも守護霊の呪文の光が見えた。
吸魂鬼を追い払うとロッテはそのコンパートメントに駆けつけた。
「大じょ…っえ、リーマス!?」
そのコンパートメントには気絶しているハリーと脅えた表情のハーマイオニー、ロン、ジニー、ネビル、そしてロッテの探していた人物リーマス・J・ルーピンがいた。
「「「「ロッテ!!」」」」
「やぁロッテ、久し振りだね。今の守護霊の呪文は君かい?」
「久し振り…最後尾にいたのね…
えぇ、そうよ。…と言うことは、あの光はリーマスの呪文だったのね。」
そう言うとロッテは生徒4人に安心するように微笑み、ハリーの様子を診た。
「ロッテ、ハリーは大丈夫なの…?」
「大丈夫よ、ただ気絶しているだけ。」
ハーマイオニーの問いに答えると4人は安心してほっと息をついた。
「リーマス、もう大丈夫だと思うけど…さっきまで他にも何体かいたわ…
!!…リーマスッ!隣の車両にいる!!」
「わかった!」
リーマスはロッテに言われた通りに隣の車両へ走った。
リーマスが去った後、ジニーがロッテに聞いた。
「ねぇロッテ、今何で隣の車両にいるってわかったの…?」
ロッテは先程の札を取り出し杖の明かりを当ててジニーに見せた。
「“護り”の札を貼ってきたからなの。
この札は防御になるけど、あいつ等には効かないわ…。
でも、誰かが防御内に入ったら私にはそれが感じるのよ。」
「去年もロッテの札が寮を守ってくれたんだよね!」
「「ネビルッ!!」」
ネビルの発言にロンとハーマイオニーは叫んだ。
ネビルは去年のホグワーツで起こったバジリスクの事件のことを話したのだろう。
だが、ここにはその事件を二度と思い出したくない人物がいる。
「ご…ごめん!僕そんなつもりじゃ……」
ネビルは膝を抱えて俯いているジニーに謝っていた。
「ジニー、あなたの所為じゃないわ。あなたはそんな想いしなくていいのよ。」
ロッテはそう言うと片手でジニーを抱き寄せた。
すると吸魂鬼を追い払ったリーマスが戻ってきた。
「もう大丈夫だろう。」
車内は明るくなり、ゆっくりとホグワーツ特急は動き出した。
「んっ…。」
ハリーから小さな声が発せられた。
それに気付いたハーマイオニーはハリーの頬を叩いた。
「ハリー!ハリー!しっかりして。」
「ウ、うーん?」
ハリーが目を覚ますとロンとハーマイオニーが床にいるハリーを座席に戻した。
「ハリー、気分はどう?」
「何でロッテが…?
それにどこ行ったんだ、あいつは?
もしかしてさっき叫んだのはロッテ?」
ハリーはまだ混乱しているようで、次々に疑問を口にした。
「ハリー落ち着いて。」
「それに誰も叫びやしないよ。」
ハーマイオニーがハリーを落ち着かせるとロンが心配そうに答えた。
「でも、僕、叫び声を聞いたんだ…。」
ハリーがそう呟いた後、パキッという大きな音がし、生徒5人は飛び上がった。
音の原因はリーマスが手に持っている巨大な板チョコを割った音だった。
「さあ、食べるといい。気分がよくなるから。」
リーマスは特別大きい一切れをハリーに渡したが、ハリーは受け取りはしたもののチョコを食べなかった。
他のみんなにもリーマスはチョコを配り、空になったチョコレートの包み紙を丸めてポケットに入れた。
「食べなさい、元気になる。
ロッテ、わたしは運転手と話をしてくるからここを任せてもいいかな?」
「えぇ。
…あ、リーマス!」
ロッテの声に振り返ったリーマスの元に何かが飛んできた。
「おっと…!」
リーマスが受け取ったそれはロッテが車内販売で買った蛙チョコレートだった。
「手持ちにチョコは無いでしょ?」
「あぁ、貰っておくよ。」
ロッテが笑うとリーマスも笑い、通路へ出て行った。
「さぁみんな、チョコを食べてね!
毒なんて入ってないから安心して?」
ロッテは悪戯っぽく笑って言った。
――――
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「ハリーの近くにリーマスがいて助かったわ。」
あと10分程でホグワーツに着く頃、ロッテとリーマスは通路で2人だけで話していた。
「僕も、まさかこんなに早くハリーに会えるとは思わなかったよ。
彼は…そっくりだね。」
そうね…とロッテは懐かしそうに、でもどこか寂しそうな顔で笑った。
「ロッテ…。“アイツ”は必ずハリーの元へ来る。」
リーマスが口にした“アイツ”と言う言葉にロッテは胸がちくりとした。
「(もう…名前で呼ばないのね……。)
わかっているわ…、ハリーは守る。
でも、私はまだ彼を…シリウスを信じてるから…!」
ロッテはリーマスの横をすり抜け、コンパートメントに入って行った。
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余談
チャロアはチャロアイトと言う宝石から。
チャロアイトは癒やしの効果があり、色は紫 色。
そこから、ヒロインは治癒の力が強く、瞳の色は紫に設定。
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