魔法の愛言葉

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汽車がホグズミード駅に着く少し前にロッテはハリー達のいるコンパートメントを去った。

アニスを医務室に連れて行かなければいけないのだ。

例年通りマクゴナガル先生が新入生に説明をするが、様子が少しおかしい。

焦っているようだ。

マクゴナガル先生は説明が終わるとすぐに何処かへ行ってしまった。

代わりの先生が新入生を誘導している。


「医務室に行くのは組み分けが終わってからにしましょうか。どこの寮になるか早く知りたいでしょ?」

「うん!
あのー…ロッテさんは…」

「ロッテでいいわよ!」


アニスは嬉しそうに頷くと続きを話した。


「ロッテは先生なの?」

「私は校医なの。もう一人マダム・ポンフリーと言う方がいらっしゃるわ!彼女は私が学生の頃からいる大先輩よ!」


新入生が大広間に入る時間が来たので、ロッテは後でアニスを迎えに行くことにした。

すると、視界にマクゴナガル先生について行くハリーとハーマイオニーの姿が見えた。

どうやらマクゴナガル先生の事務室に向かっているらしい。

気になったロッテはマクゴナガル先生の事務室へ向かった。



コンコン―――


「マクゴナガル先生、失礼します。」

「あぁ、ミス・チャロア新入生の件のご連絡ありがとうございました。
それで、何か問題でもありましたか?」


事務室には三人のほかにマダム・ポンフリーもいた。


「いいえ、彼女には先に組み分けをしてもらっています。
2人に何かあったのかと思いまして…?」

「吸魂鬼のことですよ。あなたも汽車に乗っていたのならご存知でしょう?」

「はい、勿論知っています。私もその場にいましたので…。
もし、ミスター・ポッターの具合のことでしたらもう大丈夫だと思いますよ。ルーピン先生がチョコレートを配っていましたので。」

「本当に?」


マダム・ポンフリーは闇の魔術に対する防衛術の良い先生が見つかったと満足げに話した。

最後にもう一度マクゴナガル先生がハリーに大丈夫かと聞くと、その話はそこで終わった。

マクゴナガル先生がハーマイオニーに話があると言うので、ロッテ、ハリー、マダム・ポンフリーは廊下に出た。


「ミス・チャロア、私は先に準備をしているので、毒虫に刺されたと言う生徒のことは任せてもよろしいですか?」

「はい、後で彼女と医務室に向かいます。」


マダム・ポンフリーは吸魂鬼についてぶつぶつ独り言を言いながら医務室へ向かった。


「ロッテ、ありがとう!
先生僕の話聞いてくれなくて…。」

「仕方ないわ、吸魂鬼だもの…。
きっと先生方も焦っていたのよ。」


数分経つと、ハーマイオニーとマクゴナガル先生が出てきた。

ハーマイオニーはどこか嬉しそうな顔をしている。

四人は大理石の階段を下り、大広間へ戻った。

どうやら組み分けは終わったようだ。

ハリーとハーマイオニーはグリフィンドールの席へ向かい、ロッテとマクゴナガル先生は職員席へ向かった。


「……ロッテ、どうかしたのかい…?」


隣の席に座ったロッテにリーマスは少し気まずそうに聞いた。

汽車での会話のことがあったからだろう。


「吸魂鬼のことでハリーが先生に心配されていただけよ、大丈夫。」


ロッテは汽車でリーマスと話したことを覚えていないかのように、いつも通りに話した。


「それは気の毒に。まだ13の子供が吸魂鬼に狙われるとは。
さぞかし大変だったでしょうな…。」


ロッテの右側から無表情のセブルス・スネイプがこちらを見ずに言った。


「セブルス…。」

「あぁ、そうかもしれないね。だがそれは教師としての義務だからね。
勿論、私もロッテも苦だとは感じないよ。」


リーマスはいつもの笑顔でセブルスに答えた。

セブルスは横目でちらりとリーマスを見ると何も言わずにまた視線を前に戻した。

ロッテは呆れたようなため息を小さく漏らした。



「新学期おめでとう!
皆にいくつかお知らせがある。一つはとても深刻な問題じゃから、皆がご馳走でボーッとなる前に片付けてしまう方がよかろうの…」


ダンブルドアは立ち上がって挨拶をすると、吸魂鬼についての話を始めた。

許可なしで学校を離れることは出来ない、吸魂鬼に危害を加える口実を与えてはいけない……話は深刻なもので、大広間は静まり返った。


「楽しい話に移ろうかの。」


大広間の空気を変えるためにダンブルドアはニッコリと笑いかけた。


「今学期から、うれしいことに、新任の先生を二人、お迎えすることになった。
まず……」


ダンブルドアが『闇の魔術に対する防衛術』のリーマスと『魔法生物飼育学』のハグリットを紹介した。


「そうじゃ…、もう一つ大事な話があったの。
校医のシャルロッテ・チャロアには、念のため城中に防御の札を貼ってもらっておる。決して札を剥がさぬように。」


ダンブルドアの話が終わると宴会が始まった。

ロッテはリーマスと会話をしながら食事を楽しんだ。

宴会が終わる少し前、ロッテはアニスを医務室へ連れて行くため席を立った。

ハッフルパフのテーブルにいるアニスのもとへ行くためグリフィンドールのテーブル近くを歩いていた時、ハーマイオニーに呼び止められた。


「聞きたいことがあるんだけど、後で医務室に行ってもいいかしら?」

「いいわよ!でも、ちゃんと時間は守ってね?」


ロッテはハーマイオニーと近くにいたハリーとロンにも笑いかけ、ハッフルパフのテーブルへ歩いていった。

ハッフルパフのテーブルで楽しそうにしているアニスに声をかけ、ロッテはアニスと共に医務室へ向かった。


――――
―――
――



「これで大丈夫でしょう。ミス・チャロアが汽車に乗っていて良かったわ。」

「ありがとうございました!」

「アニス、ハッフルパフの寮まで案内するわ。」

医務室でちゃんと治療を受けたアニスを寮まで送るために廊下へ出ると、生徒が一人いた。


「あら、セドリックどうしたの?」

「彼女は寮の場所がわからないと思って。」


セドリックは医務室へ向かった一年生を気遣い、ここまで迎えに来てくれたのだ。


「わざわざありがとう!
アニス、彼はハッフルパフの監督生よ。彼について行けば寮の合い言葉もわかるわ。」


アニスをセドリックに任せ、ロッテは医務室に戻ろうとしたが、再び二人の方に振り返った。


「セドリック!
監督生おめでとう!」


セドリックは微笑んでお辞儀をするとアニスと共に歩き出した。

再び医務室に入ろうとすると、今度はロッテが誰かに呼ばれた。

その人物はハリー、ロン、ハーマイオニーだった。


「こんばんは。
新しい合い言葉はもう聞いてきたの?」

「うん、ちゃんと聞いてきたよ!」


ロッテはマダム・ポンフリーに断りをいれて、三人を私室へ招いた。

ロッテの私室は医務室のすぐ近くで、内装はシンプルで女性らしい雰囲気だ。

ところどころ日本風になっている。


「どうぞ。
もう遅いし、時間もあまり無いから今回は紅茶だけね?」


ロッテはよく相談をしに来たりする生徒とは私室で話し、紅茶と手作りのお菓子を出すのだ。

紅茶を一口飲んだハーマイオニーが口を開いた。


「ロッテ、私達宴会の時もずっと気になってたんだけど、聞きそびれちゃって…。」

「なぁに?」


ロッテはゆっくりと紅茶を口へ運んだ。

しかし、次のハーマイオニーの発言に衝撃を受けた。


「もしかして…、ロッテが前に言った想ってる人ってルーピン先生なんじゃないかって…!」

「ゴフッ!!」


ハリーは慌ててナプキンをロッテに差し出した。


「いきなり何言ってんだよハーマイオニー!」

「だって気になるじゃない!二人ともそうでしょ!?」

「ロッテ大丈夫…?」

「ありがとうハリー…。大丈夫、少し驚いただけよ。」


ロッテは笑いながらハリーから受け取ったナプキンで口を拭いた。

ロッテはまだクスクスと笑っている。


「私とリーマスが恋人ってこと?」

「去年、卒業するレイブンクローの七年生に告白された時言ったんでしょ?“想ってる人がいるから”って。」


ロッテは幼く見られる東洋人ということ、もともと童顔気味だったことで実際の年齢より若く見られていた。

何より生徒達と仲が良かった。

生徒から告白されることもあるのだ。


「え…!?何で知ってるの!?」

「ロッテ、ほとんどの生徒が知ってるよ…。」

「先生も知ってるって噂だよ…。」


ハリーとロンの発言にロッテは驚くばかりだ。


「ロッテったら、本当に知らなかったのね…。」


ハーマイオニーは少し呆れ気味に笑った。


「ま…まぁ、その話はいいわ…。
リーマスと私のことだけど、彼はホグワーツ時代からの親友よ?」

「「「え?」」」


ロッテはまた笑い出し、セブルスともホグワーツの同期だと話した。


「じゃ…じゃあ、父さんと母さんとルーピン先生とロッテとスネイプは同級生なの…?」

「ハリーの両親とロッテが親友だったのは知ってたけど…」

「スネイプ先生のことは知らなかったわ…。」

「そう!だから私とリーマスは恋人ではないわ。
それに彼は私が想ってる人とも知り合いなんだから。」


ロッテは紅茶を飲み時計を見た。

時計の針は就寝時間が近いことを知らせている。


「さ、もう寮に戻った方がいいわ。」

「本当だわ!」

「早くしないとフィルチに見つかっちゃう!」

「行こう!!ロッテ紅茶ごちそうさま!」


三人は部屋を出ようとしたが、ロッテは思い出したようにハリーを呼び止めた。


「本当はふくろう便や式神で送っても良かったんだけど、直接渡そうと思って!」


ロッテは棚からキレイに包装された箱を取り、ハリーに渡した。


「随分遅れちゃったけど…、ハッピーバースデーハリー!!」


ロッテはニコリと笑った。

そんなロッテにハリーは驚き、嬉しそうに笑った。


「ありがとう!ロッテ!!」

「どういたしまして!
今は時間が無いから中身は寮に戻ってからよ?」


そして三人は寮に戻り、プレゼントを開けた。

中には銀の懐中時計と小さな布の包みと、写真が入っていた。

写真は学生時代のジェームズとリリーとロッテ、それに知らない三人の少年が写っている。


―――ハリー、お誕生日おめでとう!

何をあげればいいか悩んだけど、あなたにはこれが一番良いと考えました。

懐中時計はジェームズが使っていたものです。
私の家に置き忘れていった物なの。

小さな布の包みは“御守り”と言って日本の良いことがあるように祈る魔除けのような物です。
昔私とリリーが一緒に作った物よ!

いつでも医務室にいらっしゃい。またジェームズとリリーの話をしてあげるわ。
もちろん、ロンとハーマイオニーも一緒でいいわよ!

ホグワーツで楽しい生活が送れますように


ロッテ―――


手紙を読み終わったハリーは自分の口元がほころぶのを感じた。







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