魔法の合言葉

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組分けの際、ABC順に名前を呼ばれるのですが、この話では“チャロア”の“C”としての順番に位置させていただきます。





「見てロッテ!」

「うわぁ…!」


組分けと歓迎会のため、ホグワーツの大広間へ入った一年生達。

ロッテがリリーの指差す天井を見ると、綺麗な夜空が広がっていた。


「セブ、あれも魔法なのかしら?」

「あぁ…。」


リリーとセブルスが会話をしていると、ジェームズらしい人物がこちらを見ているのがロッテは一瞬見えた気がした。


『私はきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

――――
―――
――
―』


椅子の上に置いてあった古い帽子が歌い出し、組分けの内容が皆理解出来た。


「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください。」


先程のマクゴナガル先生が長い羊皮紙を手にして言った。


「アクロイド・ナタリア」


最前列にいた長い髪の少女がおずおずと前に出て椅子に座った。

数秒後帽子が大広間全体に向かって叫んだ。


『レイブンクロー!』


左から二番目のテーブルから拍手がわき、ナタリアを歓迎した。


「オルコット・トレヴァー」

『ハッフルパフ!』


次は右から二番目のテーブルで歓声が上がった。


「ブラック・シリウス」


大広間がざわついた。


「ブラックって…あのブラック家?」

「ブラック家なら組分けをしなくてもどこの寮になるかすぐわかるよ。」


ロッテは何故彼が注目の的になっているのか疑問に思ったが、少し考えてすぐに答えがわかった。


「(そっか…、ブラック家の人だったんだ…。)」

「何でみんなの様子が変わったのかしら?
彼が何かあるの?」


マグルであるリリーは疑問に思ったらしく、首を傾げている。


「彼の家系はね…、魔法界では有名な名家で…純血主義で、全員がスリザリン寮出身なんだって…。」

「だからみんなが騒いでいるのね…。」


シリウスの組分けは時間がかかっていた。

何故すぐにスリザリンと決まらないのかみんなが疑問に思う中、帽子が叫んだ。


『グリフィンドール!』


大広間は一瞬静まり返ったが、すぐに一番左側のグリフィンドールのテーブルからは歓声と拍手が聞こえた。

スリザリンのテーブルではみんなが呆気にとられている。

ロッテも同じく驚いていたが、すぐに我に返ることになった。


「チャロア・ロッテ」


ロッテはリリーと顔を会わせると、ゆっくりと前へ出た。

椅子に座り、帽子を被せられると目まで隠れた。


『ほぅ…、君は日本人の血が流れているね。』

「!?」


声が聞こえた。

どうやら被っている帽子がロッテに話しかけているようだ。


「…わかるんですか?」

『あぁ、わかるとも。
安倍家の血を引く子だね?それと…チャロア家の血か。
…今度は君がチャロアの血に選ばれたようだね…。』

「…はい。」


組分け帽子には本当に何でもお見通しだった。

ロッテの隠していることまでも見抜いているのだ。


『さて、君の寮だが……、どうも難しい。
純血のチャロア家と陰陽師の安倍家を考えるとスリザリンだが、性格はハッフルパフ向きだ。レイブンクローの賢さもある。そしてグリフィンドールの様な…勇気を求めている。』

「…!!」


ロッテは組分け帽子の最後の言葉に驚きを見せた。

自分は勇気を求めていたのだろうか…?


『君の希望は無いのかね?』

「特には…。」

『ふむ…。
では君の右目に聞くとしよう。』

「えっ!?」


寮を決めるはずの組分け帽子が自分で決めるのではなく、ロッテの“目”で決める事態にロッテは戸惑った。

こんな決め方で良いのだろうか?


『安心しなさい。君の“目”なら示してくれるだろう。
さ、どう見えるかね…?』


組分け帽子はそう言うと、ロッテの右目だけが見えるように帽子のつばを少し上へずらした。

ロッテは一番右側のスリザリンのテーブルから順にゆっくり見ていった。

スリザリン、ハッフルパフ、レイブンクロー…ここまで見て特に変化は無い。


「あっ…。」


最後のグリフィンドールのテーブルを見たところでロッテは小さく声を上げた。


『何か見えたかい?』

「…暖かい…色が…。」


ロッテの右目には、赤やオレンジ色をした暖色系のオーラがグリフィンドールの生徒達を包んでいるのが見えた。


『よろしい。では…、

グリフィンドール!』


組分け帽子が叫ぶとグリフィンドールのテーブルから歓声が沸き起こった。

視界がふと明るくなり、ロッテはマクゴナガル先生に帽子を脱がされたことに気付いた。

ロッテは椅子から立ち、左側のグリフィンドールのテーブルへ向かう。


「あれ…?」


テーブルへ向かう途中、ロッテは気付いた。

先程見た暖かいオーラがもう見えなくなっていたのだ。


「不思議…。」


ロッテがテーブルにつくと、歓迎するグリフィンドールの生徒達と握手を交わした。


「ようこそグリフィンドールへ!
僕はエディ・ランドール、監督生だ。」


ロッテの隣の席にいた、栗色の髪に琥珀色の瞳の男子生徒が笑顔で話しかけてきた。

落ち着いていて監督生と聞いて頷ける。


「ロッテ・チャロア、です…!
よろしくお願いします。」


ロッテがぎこちなく挨拶をするとエディは優しく笑った。


「よ!また会ったな。」


ロッテの前の席にはシリウスがいた。

とても清々しい顔をしている。


「さっきはどうも…!」

「ロッテ…だよな?
俺はシリウス、よろしくな!」

「よ…よろしく!」


ロッテはシリウスとも握手を交わした。

その後、五人の生徒の組分けがあったがグリフィンドールになる生徒はいなかった。

そしてロッテの待っていた名前が呼ばれた。


「エバンズ・リリー」


赤毛の少女が出て来て椅子に座った。

数秒後、組分け帽子が寮の名前を告げた。


『グリフィンドール!』

歓声が沸き、ロッテも立ち上がって喜んだ。


「リリー!」

「ロッテッ!」


二人はお互い抱きしめあった。


「良かったわ!ロッテと同じ寮になれて!!」

「うん、私も嬉しい!」


他の生徒達と握手を交わすと、ロッテの隣にリリーは腰掛けた。

組分けは順調に進み、ロッテの聞き覚えのある名前が呼ばれた。


「ポッター・ジェームズ」

「あ。」

「あの時の変な人ね…。」


組分け帽子がジェームズの頭に乗るとすぐに寮の名前が告げられた。


『グリフィンドール!』


ジェームズは満面の笑みでグリフィンドールのテーブルへやって来た。


「ちょっとごめんねー。」


ジェームズはシリウスの隣に座っていた男子生徒に席をずれてもらい、シリウスの隣、リリーの前に座った。


「よぅ、ジェームズ!同じ寮だな!!」

「当たり前じゃないか!!僕がグリフィンドール以外の寮に入るわけないだろ?」



ロッテとリリーが二人のやりとりを見ていると、ジェームズがこっちを見てにこりと笑った。


「やぁ!
僕はジェームズ・ポッター!よろしくね!!」

「ロッテ…チャロアです。」

「リリー・エバンズよ。」


リリーの名前を聞くとジェームズは目を輝かせた。


「リリー…綺麗な名前だね!!
よろしく、リリー!!」

「…ポッター、ファーストネームで呼ばないでもらえるかしら?」


ロッテが不思議そうに見ていると、シリウスがロッテにこっそりと話した。


「一目惚れだと。汽車の中でずっとエバンズのこと話しててうるさかったんだぜ…?」

「そうなんだ…。
でも、リリー美人だもんね。」

「そうか?」


それを聞いたロッテはシリウスの顔をじーっと見た。


「なっ…なんだよ…。」

「なんでもない…。
(彼自身、顔がハンサムだからそう思うのかな…?)」


組分けは無事全て終わったが、ロッテとリリーはセブルスが違う寮になってしまったことを残念に思っていた。

歓迎会に移り、空だった皿にはとても豪華なご馳走がたくさん並んだ。

ロッテはリリー達と会話をしながら食事を楽しんだ。

ジェームズは一生懸命リリーに話しかけていたが、リリーはまったく相手にしていなかった。

途中からゴースト達も現れ、もっと賑やかになった。

この日、ロッテは久し振りに楽しい気分になっていた。







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