残り香メモリー
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イレギュラー門調査の為に本部に呼ばれたのが一昨日。
トリオン障壁で門を強制封鎖したのが昨日。
突如、鬼怒田開発室長が持って来た小型トリオン兵の解析に追われること2時間。
その後小型トリオン兵の一斉駆除に参加したのが数時間前。
そして現在に至る。
自分のデスクで死んでいるかのように眠りにつくエンジニアの仲間達を通りすぎ、統香も自分のデスクを目指していた。
その足取りはフラフラとおぼつかない。
「もう…寝る…」
たくさんの書類に囲まれた自分のデスクに着くと統香は机に突っ伏して眠りについた。
「統香…!統香!!」
「…んぅ?」
揺すられる感覚と名前を呼ぶ声に目が覚めた。
「……望ちゃん」
「あんた大丈夫?
ほとんど帰ってないんでしょ?」
目の前にいる美人な女性はA級6位加古隊の隊長、加古望だ。
統香とは同い年ということから仲がいい。
エンジニアでもない彼女が統香を起こしに来る理由は2つある。
1つ、男だらけのこの部署で統香に変な気を起こす輩がいないとも限らないから。
2つ、統香の男関係の噂がたった場合その相手の男の命が危なくなるから。
忍田本部長も鬼怒田開発室長も了承し、加古や本部長補佐の沢村などが統香を起こしに来たりしているのだ。
「うん…。イレギュラー門の時から泊まり込み状態…。」
「ほらほら、メイクもしたまんまなんでしょ?
肌に悪いわよ。
帰ってメイク落としてベッドで寝なさい。」
「…メイクは途中で落としたよ…。
ずっとしたまんまだと気持ち悪いし、マスカラで目疲れちゃって…。」
その言葉に加古は固まる。
統香は小さくあくびをして目をこする。
「二十歳にもなって外でノーメイクってどういうことよ。
しかもスッピンでこの肌とか何?
なんなの!?」
「望ちゃん…いひゃい…」
腹が立ったと言う加古に両頬をぐにぐにと引っ張られた。
その後防衛任務がある加古を見送り統香も本部を後にした。
「ただいまー…」
「あ、統香さんお帰りなさい!」
「むむ!とーかちゃん!!」
扉を開けると玉狛支部のオペレーター宇佐美栞と雷神丸に乗った林藤陽太郎が出迎えてくれた。
「おーおー、陽太郎今日も元気だねー」
「統香さん泊まってくんですか?」
「うん、とりあえず寝させてもらうわ…。」
「とーかちゃんあそべ!」
「ムリ」
陽太郎の頭を撫で宇佐美に泊まることを伝えると統香は寝るために自室へ足を進めた。
ここ玉狛支部は統香の家ではない。
しかし、家よりボーダー本部が近いこともあり、寝泊りすることが多々あった。
そのため、玉狛支部に来るといつも「ただいま」と言っている。
そんな統香は、玉狛の戦闘員でもあり本部のエンジニアでもあるという特殊な位置にいた。
旧ボーダー創設期からいた古株で、その頃からエンジニアに興味を持っていたし才能もあった。
当時のメンバーの中で一番トリオン量の多かった統香は、シューターのトリオンキューブを使った戦闘方法に長けていてエンジニアと共に解析や工夫を凝らしてた。
そのため、玉狛に身を置くことになっても呼ばれれば本部の開発室でもエンジニアとして働いているのだった。
「はぁー…数日ぶりのオフトン……」
統香はサイドに結んだ肩より少し長めの髪を解くとぼふりとベッドに倒れ、すぐに眠りについてしまった。
次に目を覚ました時には、まる1日と半日がすぎていたとか…。
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まだ加古さんの性格とか詳しくわかりませんので、想像で書きました。
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