残り香メモリー

□04
1ページ/1ページ



グラスホッパーで移動中の統香はマスクを下にずらし、再び匂いを嗅ぐ。


「狙撃手は奈良坂君、古寺君、当真君の3人ね。
当真君は移動中か…嵐山隊の方へ向かってるのかな…。」


人数的に不利な迅の方を優先し、統香は狙撃手古寺の元へ向かった。







ーーキィン…


古寺は突然視界に入ったトリオンキューブの光に気付いたものの既に遅く、イーグレットを破壊された。


「なっ…!?」


続いて自身のトリオン供給器官も棘のようなものに貫かれて破壊されてしまった。


「ごめんね、古寺君。」

「日埜さん…!!」


統香は古寺に奇襲をしかけ緊急脱出させると、続いて奈良坂のもとへ向かう。






交戦していた風間隊の3人と太刀川は緊急脱出の光を見て迅から距離を取り動きを止めた。


「おい、どうした。」

「はいはーい、こちら奈良坂君でーす。」

「「「!?」」」

「は!?統香!?」


狙撃手の通信からは予想と全く違う声が聞こえ、風間隊と太刀川は驚きを隠せない。

特に太刀川は声をあげてしまうほどだ…自分の彼女の声が聞こえたのだから。

そんな様子を見て迅はニヤニヤしていた。


「慶おかえりー。
遠征部隊の皆さんもお疲れ様です。」

「なんだよお前、参加してたのかよ…。
丁度いい、こっち来て迅と一緒に相手しろ。」

「嫌よ、私の役割はそっちじゃないし。
あ、奈良坂君ももうすぐ緊急脱出してもらうから。
はい、奈良坂君パス。」

「すいません…奇襲に気付けませんでした…。」


その直後、緊急脱出の光が再び夜空に流れた。


「あの人使うとかずるいなー」

「日埜さんも玉狛なんだしそりゃいるだろ…」


菊地原がぶーぶー文句を言い歌川がそれをなだめる。


「日埜か…厄介な奴が来たな。」


風間はぼそりと呟いた。

統香のサイドエフェクトは強化嗅覚。

たとえバックワームやカメレオンで居場所がわからない相手でも匂いで判断することが出来る。

数キロ離れていても個人を判断することが出来、その嗅覚は犬以上と言われている。

狙撃手や隠密戦闘を得意とする風間隊からすると統香はとても厄介な相手であった。

しかし、広範囲を長時間使いすぎると鼻が麻痺したり体調を崩してしまうことがあり、統香は時折マスクをして使いすぎないようにしている。

膨大なトリオン量の持ち主なのに対し、サイドエフェクトが最低ランクCの強化五感ということに周りは首を傾げているが、本人は特に気にしていない。


「あーあー統香さん?」

「何、迅?」


耳にはめた通信器から聞こえる迅の声が気まずそうだった。


「太刀川さんがさ…帰ったら覚悟しとけだって…。
なんかごめんねー…。」

「…あー……うん。」





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ