十人十色

□.
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「お、目ぇ覚めたか?」


目が覚めると私は手に包帯を巻かれ布団で寝かされていた。

そして横には眼鏡をかけた、やけに良い声の見知らぬ少年が座って私の頭を撫でていた。

誰だ…。


「おーい、起きてるか?」


目の前でひらひらと手を振られる。

えーっと…お米炊いて、逃げて、封印解いて………。


ーーガバッ…!

「おっ?」


気を失う直前の出来事を全て思い出して私は勢いよく起き上がって少年とは反対側にある障子を開けて廊下に飛び出した…はずだった。


「ぶっ…!?」

「おっと…、急に飛び出したら危ないじゃないか。」


部屋に入ろうとしていたのか、障子の前に立っていた誰かの足に激突してしまったらしい。

ぶつけた鼻を押さえながら上を見上げると、肩にこんのすけを乗せた歌仙兼定と目が合った。

封印を解いた時と違う服を着ていて、前髪をリボンで留めている……え、何それ…。


「思ったより元気そうじゃないか。」

「主様!お目覚めになられたのですね!!」


歌仙兼定の肩からこんのすけが飛び降り、私に擦り寄ってくる。


「たった今起きたところだぜ。
急に飛び出したから旦那が来てくれて丁度よかった。
手の方も大丈夫みてぇだしな。」

「世話をかけたね。
まったく、起きて早々逃げ出そうとするなんて…。」


2人の視線がこちらを向き、私はこんのすけを抱き締めて一歩後ずさる。


「主様、主様!
ご安心ください、もう刀剣男士様を警戒しなくてよろしいのですよ!」

「ぇ…?」


こんのすけの言葉に呆けていると、腰を下ろした歌仙兼定が自身の前の畳をポンポンと叩く。


「説明をするからそんな所に突っ立ってないで座ったらどうだい。」


こんのすけを見れば笑顔で頷くので、歌仙兼定と少年の目の前に…少しだけ距離を空けて腰を下ろす。

私の行動に2人は苦笑いしていたけど、仕方ないでしょ…。


「結論から言おう。
君のおかげで僕達の記憶は元に戻った。
もう君を襲おうとする者はいないよ。」


その言葉を聞いて肩の力が少し抜けた。

だが、どうして刀剣男士達の記憶が元に戻ったのだろうか?


「僕達の記憶についてだが…、まずはこれを見てくれ。
見覚えがあるだろう?」


歌仙兼定が差し出した紙には子供が描いたであろう誰かの似顔絵が描かれてあった。

紫色の髪…この絵…これは…。


「君が僕を描いたものだよ。」

「!!
…やっぱり…むらさき、のおにいちゃん……?」


歌仙兼定を見上げれば微笑んで頷いた。

気を失う前の出来事は本当だったんだ。


「何故君が僕の絵を描いたのか…これには僕も主も驚いたんだ。
僕の姿は君には見えていないはずだったんだけどね…。」

「…あるじ…?」

「あぁ、初代の主のことさ。
君の祖父だよ。」





ん?





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