十人十色
□.
10ページ/10ページ
30
「はい、これで印も傷も見えなくなったよ!」
「ありがとうございます。」
私は清光にメイクをしてもらった。
それは右目にある術の印と、鼻の傷を隠す為だ。
この鼻の傷は、先日の色鬼の時に私が盛大に転んでしまい、手足と鼻を擦りむいてしまったのだ。
走って遊ぶという行為が久しぶりすぎて楽しくなってしまい、調子に乗った結果がこれだ。
あの時は凄かった…。
中身は25歳なので転んだだけで泣くことはないのだが、ものすごく心配され、すぐ様一期と薬研君に連れて行かれ手当された。
それはそれは一瞬の出来事で何が起こったのかわからなかった…。
少し転んだだけなのに、話を聞きつけた刀剣男士達が次々と駆けつけて……いろいろ大変だった。
まぁ…確かに私が彼らの立場だったら同じような反応になるかもしれない。
小さな子供が転んで怪我したら心配するだろう…うん。
だから私は子供の姿で怪我をしないようにすることを心がけた。
そして何故今、清光にメイクで印と傷を隠してもらったかと言うと、今日は初めてこの本丸の外に出るからだ。
本当はこの姿でなんて出たくないのだが、これは政府の命令で、今日は演練に参加しなくてはいけないのだ。
「えんれんにさんかするさにわは、みんなわそうなの?」
「俺の記憶だとスーツもいたけど、和装がほとんどだったかな…。
はい!髪もこれで完成!!
も〜!!姫可愛い〜!!!」
私は紅色の着物に身を包んでいた。
先日の七五三以来の着物だ。
これもまた歌仙が用意した物で、清光に着付けもメイクもヘアメイクも全てやってもらった。
もう…清光の女子力が高すぎて…。
前回参加していた、乱ちゃんと次郎ちゃんはそれぞれ遠征と出陣中で今回はいない。
「姫、一緒に撮ろ!!」
「あ、はいはい。」
清光が取り出したのはスマホ…のように見える小型のカメラだ。
写真を撮るためだけのスマホと説明した方が早いかもしれない。
このノリで自撮りとか女子高生と一緒にいるみたいだ…。
「主、準備出来たかい?
そろそろ時間だよ。」
外から本日の近侍である歌仙の声がしたため、私と清光は外へ出る。
「どーよ!!
姫、ちょー可愛くなったんだからね!!!」
「あぁ、よく似合っているよ。
やはり君は和装が似合うね…今度何枚か見繕っても…」
「はやくえんれんいきましょう…!!」
何やらまた着物が増えそうな流れだったので、なんとか遮る…。
この本丸と外を繋ぐ鳥居のゲートの前には、演練に参加するメンバーと、見送りの為に集まった刀剣男士達が集まっていた。
「あ!きましたよ!!」
短刀 今剣。
「わ〜!姫様とても可愛いですね!!」
脇差 堀川国広。
「姫や、また足が痛くなるであろう?
ほれ、抱っこしてやろう。」
太刀 三日月宗近。
「姫ちゃんは赤も似合うね!!
今度は僕もコーディネートしてみたいな!」
太刀 燭台切光忠。
「がははは!!
これなら小さい姫でもすぐに見つけられそうだ!!」
薙刀 岩融。
「そろそろ行こうか、主。
僕達も演練は久しぶりで楽しみなんだよ。」
部隊長 打刀 歌仙兼定。
以上6人が今回の演練に参加するメンバーだ。
「はい。
えと…ではみなさん、るすをよろしくおねがいします。」
「お任せ下さい!!
この長谷部が責任を持って…」
「姫いってらっしゃい〜!!」
「気を付けてな。」
「驚きの結果を待ってるぜ!」
またもや長谷部の言葉は清光に遮られ、薬研君と鶴丸もそれに続く。
皆それぞれ見送りの言葉をかけてくれてむず痒くなる。
「ほら主、挨拶がまだだよ。」
歌仙に背中をポンと押され、私は見送りに来ている彼らと本丸を見つめる。
そうだ…彼らは私の家族でここは家なんだ…。
「ぃ、いってきます…!!」
光忠が慣れた手つきでゲートのパネルを操作して演練場へゲートを繋ぐ。
『いってらっしゃい!』
私達は見送りの声を背にゲートをくぐり、本丸を…私達の家を後にした。
.