忍ぶる恋

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最近、忘れかけていた昔の夢を見た。

抜け忍となって追われていたところを、山田先生一家に助けられた頃よりずっと前…。

周りと特別親しくしなかった自分が、少しだけ自分から関わりを持った後輩がいた。





「……加弥乃…」

「…!
半助、知っているのか?」


襲われた村で1人、村人の墓を作っていた女が倒れた。

駆け寄るとずっと穴を掘り続けていたのか、手にはマメが出来、手足には血の滲んだ包帯が巻かれていた。

女を抱き起こした伝蔵の手に何か液体が付く。

背中に大きな傷でも負っているのか多くの血が滲んでいる。

先日の大雨のせいか、熱もあるらしく体が熱い。

伝蔵が女の髪をよけ、顔をよく見えるようにすると半助がポツリと名前を口にしたのだ。

驚く伝蔵が半助を見ると半助自身も信じられないと言った顔をしていた。


「…私の…昔の後輩です……。」

「そうか…。」


“昔の後輩”それだけで伝蔵には伝わった。

詳しい話を聞く必要があるため、2人は加弥乃を1度学園へ連れ帰ることにした。





私は所属していた忍者隊から逃げた。

今度こそ逃げなれば…。

もうあんな所にはいられない。


「ゆっくりしていきなさい。」

「さぁさぁ、ご飯が出来ましたよ。」


深手を負った私を村のある老夫婦が発見し、理由も聞かず手当てして世話をしてくれた。

昼間には近所の子供達が花を持って来たり、蛙や虫を捕まえては見せに来た。

この村は居心地が良すぎた。

3日が経ち、私は何も言わず夜中のうちに村を出た。

自分が滞在していた痕跡は全て消し、この3日間外にも出ていない。

だから見つからない、あの村は巻き込まれないと思っていたのに…。

村を出て数時間が経った頃、村のある後方から煙が上がっていた。

木の枝が引っ掛かろうが構わず村に向かって木々を跳び移った。

傷口が開いたらしく背中が熱くジクジクと痛み始める。

村に着くとそこは炎に包まれていた。

人の気配は無く、倒れている村人しかいない。


「っ…おじさん…おばさん……」


手当てをしてくれた老夫婦も折り重なる様に倒れ、2人からは血が流れていた。

息のある者はいないか村中探し回ったが誰一人いなかった。


「…ごめっ…ごめんなさいっ……!!
ごめんなさいごめんなさいっ!!!」


その場に座り込み私は謝り続けた。


「ごめんなさいっ…ごめんなさい…!!!
…っ…うわああぁぁぁぁぁ!!!!!!」


最後には泣き叫ぶことしか出来なかった。





ーートントン


「は〜い。
あ、山田先生に土井先生おかえりなさ〜い!」

「小松田君、サインは後にしてくれ。
急ぎなんだ。」

「え〜…ってその人どうしたんですか!?」


半助が背負っている加弥乃の姿を見て小松田は驚き、サインのことはもう何も言わなかった。


「あ、山田先生と土井先生だ!」

「おかえりなさーい!」

「お土産ありますかー?」


2人が帰ってきたことに1年は組の乱太郎、きり丸しんベヱが気付いて駆け寄ってきた。

伝蔵と半助は厄介なことになると頭を抱えたくなった。


「ど、土井先生…!!
その後ろの方は…!?」

「すごい怪我じゃないですか!!」

「大丈夫なんですか!?」

「お前達、話は後だ。
乱太郎、きり丸、新野先生と善法寺伊作に怪我人のことを伝えてきなさい。
しんベヱは山本シナ先生をお呼びしなさい。」

「「「はい…!」」」


伝蔵の素早い指示に3人はそれぞれ駆け出した。





余談

無変換時の加弥乃という名前は兵庫県にある栢野(かやの)と言う地名から取りました。


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